新型コロナウイルス禍の収束を見据え、日常生活を取り戻すための動きが活発になってきた。6日は飲食やホテルなどの企業グループがサービスの利用者に特典を付与すると発表し、政府はサッカーJリーグの試合で観客の人数制限を緩和した大規模な実証実験を行った。いずれもワクチンの接種証明を活用した取り組みだ。官民が足並みをそろえて、景気を引っ張る個人消費を刺激する。

 政府は緊急事態宣言とまん延防止等重点措置を9月末で全面解除し、飲食店の営業時間延長や酒類提供の解禁といった行動制限緩和に踏み切った。感染力の強いデルタ株が猛威を振るった流行の「第5波」が落ち着いたためだが、冬場の「第6波」が懸念され、経済活動の正常化は予断を許さない。

 特典付与は近く始まり、エイチ・アイ・エス(HIS)やアパホテル、かっぱ寿司を運営するカッパ・クリエイト、Jリーグの鹿島アントラーズが参加し、さらに増えそうだ。カッパ・クリエイトは飲食代の10%引き、アパホテルはチェックアウトを1時間無料で延長する特典を検討する。

 接種歴を証明するアプリ「ワクパス」を医療系ベンチャーなどが提供する。利用者はスマートフォンに無料で取り込み、2回接種した情報や身分証明書などを登録すると、アプリ画面に顔写真入りの接種証明が表示される。これを店頭で提示すれば特典がもらえる。

 フリーマーケットアプリ大手メルカリ会長で鹿島アントラーズの社長も務める小泉文明氏は「新規感染者が減り少し明るい気持ちがある一方、(経営面などで)危機意識もある」と述べた。

 一方、Jリーグでの実験は愛知県豊田市の豊田スタジアム(約4万4千人収容)が舞台。「ワクチン・検査パッケージ」という政府の仕組みを使い、2回接種済みや検査陰性のいずれかを示す証明を持っている人を1800人まで収容する。

 緊急事態宣言が出ていた愛知県での大規模イベントは9月末まで入場者の上限が5千人だったが、行動制限緩和で1万人まで入れる。6日の試合の観客は実験分を含めて最大1万1800人となった。名古屋市から1人で応援に来た会社員の佐藤隆彦さん(44)は「ワクチンを打っていても感染するかもしれないので、観客席では人になるべく近づかないようにしたい」と話した。

 政府は制限緩和の実験を愛知を含めた13道府県で行う予定だ。

 このほか、民間企業では全日本空輸と日本航空が接種済みの乗客に国内線の往復航空券を抽選で贈呈する。

 ワクチン接種者への特典は佐賀県内にも。「御宿高砂」(嬉野市)は、9月上旬からワクチンを2回接種した人を対象に一律1100円を割り引くプランを提供している。すでに30組ほど利用があり、池田榮一社長(72)は「取り組みは快調。高齢の方だけでなく、20、30代の利用も多い」と手応えを語る。佐賀市のホテル龍登園も同様の宿泊割引を設定しており、プランによるが最大2千円割引になる。宿泊者の4割ほどが利用しているという。

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