「令和版所得倍増計画」「新自由主義からの転換」―。岸田文雄新首相が自民党総裁選で掲げたスローガンは、大企業や富裕層への優遇政策ともやゆされた「アベノミクス」から大きくかじを切ることを意味する。「低所得層や地方に光を当ててほしい」。新内閣が発足した4日、佐賀県内の経済界からも期待の声が上がった。

 佐賀県商工会議所連合会の陣内芳博会長は岸田氏が総裁選で所得格差の是正を掲げたことに触れ、「社会を支える人が低賃金で働いている現状にスポットを当てることは正しい」と評価。前政権では中小企業を再編・統合し、中堅企業化を促す議論が進められていただけに、「雇用を支えているのは圧倒的に中小企業。それらが地方でも存続できるような政策を」と要望する。

 新型コロナウイルスへの対応と経済政策の両立については「非常に難しい注文」としつつ、「子や孫の世代に過度な負担を残さないためにも、プライマリーバランス(基礎的財政収支)は常に念頭に置き、見通しを示してほしい」と話した。

 岸田氏はワクチン接種証明などを活用した「GoTo2・0」を実施する考えを示している。唐津市旅館協同組合の松下隆義理事長は「早期のGoTo再開のためにも、若い世代へのワクチン接種を急いでほしい」と切望する。昨年のGoToトラベル停止以降、客室の稼働率は「良くて半分」という状況が続き、今年は唐津市が「まん延防止等重点措置」の対象地域になるなどの逆境も。「宿泊・観光へのテコ入れは業界全体の願いだ」と力を込めた。

 財務や経済系の大臣は顔ぶれが刷新され、新たに経済安全保障担当相が置かれた。海外との取引が多い油圧プレス機製造の森鉄工(鹿島市)の森孝一社長は「どの程度の規制になるのか注視したい」とした上で、「経済の基盤はものづくり。技術者の流出は国が対応すべき課題だ」と現場での技術者不足にも言及した。

 期待の声は農業界からも。金原壽秀JA佐賀中央会会長は「岸田新首相は家族農業、中山間地などの多様な経営体の支援強化を打ち出している」と、地方の農業に寄り添う姿勢を高く評価。環境が厳しさを増す中、着実な支援策の実施を求めた。(大橋諒、宮里光)

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