中学2年の男子A君。どうしても朝起きられない。長時間立っていると気分が悪くなる。おなかの調子が悪くて排便が気になる。そのため遅刻して通学が負担になっている。遅れて教室に入ると友人の視線が気になるので欠席することも多い。登校すれば時間と共に体調は良くなり午後からはほとんど普通に過ごすことができる。体育も参加できる。帰宅時には体調がよくて夕食後はテレビをみたり、ゲームをしたりして深夜まで起きている。だけど朝はやっぱりどうしても起きることができない。
 A君の話をまとめるとこのような状況でした。「心身症的な症状だなあ」と思いながら話を聴きました。実は、このような不定愁訴で来院される小学校高学年の子や中学生がとても多いのです。まず身体の診察をし、検尿と採血をして栄養状態、貧血の有無、血糖値、肝機能、腎機能に大きな異常が無いことをたしかめたあと、心電図も異常がないことを確認して、「体には大きな異常がなさそうなこと」を説明しました。
 体の病気ではないかと心配で不調な子は、これで徐々に回復する場合もあります。A君の場合は、自律神経失調が疑われましたので、起立性調節障害の有無を調べる新起立試験を実施しました。その結果、横になった状態から立ち上がるときに血圧がストンと下がることがわかりました。血圧は自律神経と関連があります。自律神経は心拍や呼吸、血管の緊張、消化管の動きなど体の至る所を意識外に調節しています。体が急に成長する思春期には、臓器の成長に自立神経やホルモンによる調節機能の成熟が追いつかずに、アンバランスになりがちです。
 A君の場合は朝の体調不良に血圧の調節機能不全(自立神経機能不全)が関与していることが推定されました。血圧を上げる薬を処方し、急に立ち上がらないこと、過剰な塩分制限をしないことなど、血圧を維持する生活習慣の指導を行いました。しかし、これだけで完治するのはむしろまれで、A君もなかなかすっきりしませんでした。難しくなる学習内容、近づいてくる受験、部活、友人・先生との人間関係、家庭内での心配事など社会的ストレスが体の症状に関与していることがほとんどなので、同時に心の問題に個別に向き合うカウンセリングを続けています。

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