人生100年時代、目の健康を
保つために近視予防と定期健診を

スマホやタブレットの長時間使用が将来「緑内障」の原因

 遠くのものがぼやけて見える近視。近視が強くなると、将来重大な眼病を引き起こすことが分かっています。人生100年時代、目の健康を保つために子どものころからのケアが大切です。ひらまつ病院の眼科部長の木下明夫さんに近視予防方法や遠視、スマホ内斜視について聞きました。

近視が「緑内障」など眼病の引き金に

 近視の発症には「遺伝」と「環境因子」が大きく関与します。遺伝は受け継いだ遺伝子によるもの。環境因子は近くでものを見る作業が多い人に起こります。
 最近注目されている環境因子は、スマートフォン(スマホ)やタブレット、パソコンの普及によるものです。近距離で集中して物を見ようとする機会が増えたことによって、子どもの近視が増加しているようです。厚生労働省によると小学生が1日平均1時間、中学生は2時間、高校生は3時間、スマホを見ているというデータがあります。子どもは近くを見る際、目が本来持っているピント調整力が強く働きます。スマホを見続けると、ピントを元に戻す調整力が効かなくなり、近視に進行していくと考えられます。

子どものころから目に負担のない生活を

 近視は20代前半まで進みます。パソコン作業で近くを見る時間が多い人などは大人になってから近視になる人もいます。
 近視はコンタクトレンズや眼鏡で矯正すればいいと軽く考える人もいますが、実は若い頃の近視が進んで「病的近視」に移行すると、大人になって近視に加え、「緑内障」や「網膜出血」「脈絡膜新生血管症」「黄斑変性」「網膜剥離」といった失明にもつながる眼病にかかるリスクが高くなることが分かっています。このリスクを減らすために、最近では眼科専門医も子どもの近眼予防に力を入れています。
 人生100年時代、目の健康を保つには、小さい頃から近視にならないよう、目に負担のない生活を送ることが大切です。
 近視予防には、外遊びなどを通して目に刺激を与えることです。1日2時間程度が目安です。また、勉強や本を読むときは目との距離を30㌢以上離します。30分に1回は本から目を離し、遠くを見るようにします。暗くなりすぎないよう、明るさにも気を付けてください。

急性内斜視はスマホの影響?!

 また近視に加え、両目で見たときに物が二重に見えたり(複視)、目が内側に寄ってしまう「急性内斜視」が子どもや若者の間で増加傾向にあると指摘されています。スマホのような小さな枠内でゲームをしたり、動画を見ようと集中して目を酷使していることが影響していると思われます。
 この治療はまず、スマホの使用を控えて目を休ませるようにします。それでも治らない場合、複視は眼鏡で矯正し、斜視が治らない場合は手術を行います。スマホを見る時間が変わらないと症状は改善しません。普段の生活の中でスマホやタブレットの使い方を変えていくことが大事です。

「弱視」につながる「遠視」は早期発見が大事

 「遠視」は早く発見しないと、視力の発達が妨げられて「弱視」になる可能性があります。早期発見・早期治療が大事です。乳幼児健診や三歳児健診で眼科検診をきちんと受けるようにしてください。
 当院では簡単に屈折異常や斜視のスクリーニングができる「スポットビジョンスクリーナー」※を導入しています。近視も遠視も定期的にチェックして進行度を確認します。特に遠視は、しっかり視力を出す訓練が必要です。定期的な受診を心がけましょう。

 乳幼児期の子どもをあやすためにスマホを活用する保護者も多いようです。この時期の子どもは、物を一生懸命に見ようとします。スマホを近距離で長時間見ることは、視力の発達にも影響すると考えられます。目の健康を保つ習慣が付くまでは、大人もスマホの使い方を考えて生活することが肝心だと思います。

※スポットピジョンスクリーナー

※スポットビジョンスクリーナー/子どもに負担なく、短時間で的確に近視や遠視などの屈折異常や斜視を発見することができます。

 

 MEMO  タブレットを使うときの5つのやくそく
(文部科学省・児童用から要約)

  • 姿勢をよくし、目から30㌢以上は離して見る。
  • 30分に1回は画面から目を離し、20秒以上遠くを見る。
  • 寝る前1時間はタブレットを使わないようにする。
  • 遠くを見たり、まばたきをして自分の目を大切にする。
  • ルールを守って使う

 

医療法人ひらまつ病院 眼科部長

 

木下明夫(きのした・あきお

 医学博士。日本眼科学会(専門医)、小児眼科学会、日本眼科手術学会、日本白内障屈折矯正手術学会、日本斜視弱視学会、日本眼炎症学会、日本涙道液学会、日本網膜硝子体学会など所属。2016(平成28)年から現職。