近代化が急速に進んだ明治期、次々と外国語が入ってきた。社会制度や文化、スポーツなどあらゆる分野で、翻訳した新しい日本語がつくられた。ベースボールが「野球」となったように◆こうした新語づくりに貢献したのが森鴎外や夏目漱石、福沢諭吉らそうそうたる面々。言葉の意味を踏まえ、ふさわしい漢字を当てる作業は大変な労力だったろう。初めて見聞きした人は何のことか分からずに戸惑ったに違いないが、練られた新語だったからこそ浸透したのだと思う◆何かに名前を付けるのは実に難しい。わが子となればなおさらで、人生の始まりから終わりまで付き合うだけに迷いに迷う。親の思いが込められた名前は多彩で、本紙に載っている「すこやか佐賀っこ」でも本来の音読み、訓読みにはない読み方も目にする◆こうした状況に、どう対応していくか。上川陽子法相は身分証明の根本となる戸籍に氏名の「読み仮名」を記載する検討を法制審議会に諮問した。行政手続きのデジタル化が進む中、個人データの管理や検索をしやすくし、事務処理を効率化するのが目的という◆本来と異なる読み方や意味合いを踏まえて、どこまで許容するかなど課題は多岐にわたるようだが、名付けた人の思いは尊重したいところである。鴎外や漱石と同じように、考えた末の名前なのだから。(知)

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