佐賀市長選の立候補予定者6人が政策を主張した公開討論会=佐賀市天神のロイヤルチェスター佐賀

 任期満了に伴い10月10日告示、17日投開票の日程で実施される佐賀市長選を前に、立候補予定者6人による公開討論会(守成クラブ佐賀主催)が9月16日夜、市内のロイヤルチェスター佐賀で開かれた。水害対策や新型コロナウイルスで影響を受けた地域経済対策などをテーマに、それぞれの政策を主張した。三つのテーマの発言要旨を採録する。(構成・大田浩司、川崎久美子、宮崎勝)

立候補予定者6人

※出馬意向が表面化した順

  • 坂井英隆(さかい・ひでたか)氏(41)弁護士、元国土交通省官僚
  • 堤雄史(つつみ・ゆうじ)氏(36)弁護士
  • 田中豊治(たなか・とよじ)氏(73)西九州大教授
  • 古賀臣介(こが・しんすけ)氏(58)前佐賀市地域振興部長
  • 馬場範雪(ばば・のりゆき)氏(60)元農林水産省官僚、元佐賀市副市長
  • 藤田直子(ふじた・なおこ)氏(69)小城市の市民団体代表

※回答は出馬意向が表面化した順

水害対策

最先端の技術と知恵活用 坂井氏

 市の水害対策は一言でいうと、水はけ対策だ。ハイパワーの排水ポンプを新設し、河川の改修をする。下流域の協力をいただき、樋(ひ)門(もん)操作の連携を強化する。AIを活用して事前に災害を予測して、避難誘導を迅速に行いたい。具体的には今後の雨量予測、川の水位、これまでの被害状況などをAIに学習させ、分かりやすく情報提供する。国交省で水害対策を専門的に行ったプロとして、培った最先端の知恵と技術、予算をフルに活用する。安全で安心して住み続けられる「水害に強いまちづくり」を強力に推進したい。

根本的な減災に取り組む 堤氏

 地球温暖化の影響で定期的に今回のような豪雨が発生すると思われる。従来の対策ではなく、根本的に変える必要がある。最も重要なのは(被害が)起こらないことだ。河川やクリークの改修、遊水池設置を考えている。何百億というお金がかかるかもしれないが、被害が起きた後の支援に結局は多額のお金を使うから、借金を背負ったとしても根本的な減災に取り組みたい。水田、森林という本来、貯水機能を持つ自然が減っており、保全にも力を入れる。「安心安全で暮らせるまち」が必要で、温暖化対策にも取り組む。

調整池やため池整備必要 田中氏

 市の水害の問題をどのように解決するか、深刻に考えないといけない。提案したいことは四つある。一つは調整池。雨を一時的に貯水する役割を果たすが、その数が非常に少ない。新設、あるいは増設する必要がある。二つ目はため池。農業用水だけでなく、治水にも利用できるので経済的な効果が高い。水路のポンプに関する権限強化も必要不可欠ではないか。最後に申し上げたいのは、Wi-Fi(ワイファイ)環境をもう少し整備すること。どこにいてもスマホなどで水害の情報を見て、安全に避難できるようにしたい。

佐賀江川の排水機能向上 古賀氏

 避難誘導、避難所運営を不安を与えないようやっていく。佐賀江川の排水機能がもう少し上がらないと、市中心部の水がはけない。佐賀江川にある排水機場の機能を上げることも大事。佐賀江川に流れる城原川のダム建設とともに国へ要望したい。浸水がよく起きる大和町川上地区では河川や貯水池を整備したい。ソフト面では、スムーズになった樋門操作をもっと強化できるようにAIなどデジタル技術を活用したい。浸水地域、通行止め情報を早く知らせる仕組みづくりに早急に取り組む。情報の収集、共有、発信が大事。

利水と治水機能回復図る 馬場氏

 8月11~17日の大雨の総雨量は1200ミリで観測史上1位になった。2年前も起き、これからずっと降るだろう。佐賀市は低平地がゆえに冠水が起きてきた。しかし、江戸時代からあるクリークという財産がある。利水と治水機能を備えるが、川の泥がたまったり水草が繁茂したりして、あまり機能していない。整備し直し、皆さんと機能回復を図る。(大雨前に)クリークの水を抜いておけば市内の水を軽減できるし、畑作物が冠水しない。農水省でいろんな経験をし、クリーク、治水の専門家だ。この分野は私しかできない。

排水の操作さらに革新化 藤田氏

 気候変動で長雨やゲリラ豪雨が今後ますます増えるだろう。浸水対策になるクリークが崩れかかっており、市が護岸工事をしているが、追いついていない。ヘドロもたくさんたまっている。川底の掘削がまず必要だ。水路の幅も拡張していけたらと考える。しかし、土地の値段も上がっており、用地の買収がしにくくなっている。現状を見ると、「適応策」というよりは(被害の)「緩和策」しかない。嘉瀬川、筑後川流域の(排水)ポンプをリモート操作しているが、さらに革新化できるようにしていきたい。

コロナ終息後の経済対策

地域振興券で消費増やす 坂井氏

 まずはプレミアム付きの地域振興券で消費を増やす。飲食、観光、商工、農林水産業を早急に支援する。振興券1億円当たり約6億円の消費効果があると予想される。最先端技術を持つ企業の誘致に取り組み、働く場を創出したい。グーグルやアマゾンなど急成長企業で多数の友人が活躍しており、人脈をフルに活用する。テレワークやキャッシュレス決済の機器導入、環境変化に対応できるよう支援する。外国人観光客のおもてなし対策を充実させ、古湯・熊の川温泉、三瀬など市の財産を磨き観光資源のPRに力を入れたい。

企業のIT活用一層支援 堤氏

 新型コロナが契機となり、ウェブ会議やオンライン手続きでの活用などが進んだ。企業のIT活用をもっと市で支援したい。環境があれば働けて、土地が安い佐賀市はITと相性がよく、企業誘致を進めたい。飲食店や旅館、酒や食べ物を提供する企業にダメージが出ている。市がお金を出して市民の皆さんが飲食店で食べて、リピーターになってもらう。農水産物も海外の人に食べてもらって輸出する。単に支援金を渡すのではなく、そういった施策にお金を出したい。そして佐賀にさらに人が来るという仕組みをつくりたい。

個人向け支援を徹底的に 田中氏

 市は昨年、中小企業、小規模企業の振興条例を策定したが、「行動プラン」まで浸透していない。コロナ後の新しい環境状況に適応できなければ、人や企業が衰退してしまう。せっかく条例をつくっているので、二つのプランで積極的に支援していきたい。まずは個人向け支援を徹底的に行うこと。個人を守ることこそが政治行政の役割、責任だ。孤独化、孤立化させてはならない。二つ目は企業の支援活動。経営者の生活を守る、倒産させない、閉店させない。そういった支援を行政、金融機関を通して実施していきたい。

人を動かすイベント推進 古賀氏

 昨年は古湯温泉旅館の皆さんが悲鳴を上げられた。コロナで一番影響を受けたのは飲食店と宿泊施設。市の経済を支えられた方を守るのも私たちの仕事だ。経済が停滞しないよう、まずは人を動かす仕掛けをしなければいけない。佐賀城下ひな祭り、栄の国まつり以外にもイベントをやりたい。佐賀古湯キャンプ、三重津海軍所跡ガイダンス施設…。スポーツや歴史、文化のイベントを開いていきたい。観光業に力を入れ、福岡都市圏をターゲットに自然、おいしい食べもの、温泉をPRして若い人を呼びたい。

財政出動を含めて下支え 馬場氏

 新型コロナの影響は飲食、観光業に打撃が大きい。プレミアム券とかインバウンド(訪日外国人)とかあるが、今の方々の生き残りを先に考えないといけない。まずはワクチンの接種を進めることだ。ウィズコロナに向け、新事業の展開、生き残れる経営支援など、国もいろいろなことをやってくると思う。それでも不十分な場合、市の財政出動を含めて下支えする。新たなチャレンジ、インバウンド、ネット環境による農産物販売なり、新たな事業展開につなげる。今あるこの危機の借金をいかに軽減できるかに力を注ぎたい。

インバウンドを取り込む 藤田氏

 中国や東南アジアの方が観光施設にたくさん訪れていた。海外からの観光客に支えられていたと思い知らされた。コロナが終息したらアジアだけでなく、ロシアなどからのインバウンドもターゲットにしてはどうか。ウラジオストクやハバロフスクは飛行機で2時間半程度。ロシアの音楽家が鳥栖市で2週間前に演奏している。ロシアのガス大手が福岡市の企業と契約を結び、7万トンのガスを輸出している。こうした業者の方たちと、観光を含めてインバウンドの取り込みを目指していけたらと思う。

中心市街地を含めた街づくりについて

持続可能なまち作りたい 坂井氏

 中心市街地はまちの顔で、このエリアの発展は大切だ。秀島市長は公共施設の誘致、駅周辺整備など一定の取り組みをされてきた。ただ残念ながら県都の中核としての本来の姿には道半ば。増加した空き地・空き家を利用し、緑あふれるポケットパークを整備し、持続可能なまちを作りたい。緑を増やせば、周辺におしゃれなカフェやショップを誘導できる。歩いて楽しめるウオーカブルシティー化を目指す。山間部など移動手段確保が大きな問題となっている場所では、自動運転コミュニティーバスの実用化などに取り組みたい。

駅周辺部のにぎわい創出 堤氏

 福岡のようなまちを目指す必要はない。現在の佐賀市は、暮らしやすい。ただ、駅周辺部は寂しい。人も店も少ない。めりはりの利いた予算をつけ、駅ビルを建て、佐賀の産物、飲食など楽しめる、味わえるような場所をつくりたい。教育や子育て環境の充実にも取り組みたい。インターナショナルスクールを誘致し、国際的な感覚を養える、わくわくできるまちをつくりたい。また治安の良さ、土地の安さを生かしてIT企業を誘致し、規制緩和をして「新しい事業を起こすなら佐賀で」となるようにしたい。

福祉のまちづくり念頭に 田中氏

 中心市街地の基本計画、基本方針などがあるが、商店街の空洞化が進んでいく一方だ。高齢者、障害者、健常者が一緒に楽しめる「福祉のまちづくり」を念頭に置いている。「健康幸福都市づくり政策」をキーワードに挙げている。健常者と障害者がまちなかで自然に交流できる施設、場所を作りたい。例えば認知症や障害者の方々が自由に交流できる「オレンジカフェ」のような場所を。Wi-Fi(ワイファイ)環境の整備も早急に進めていきたい。店からの情報発信も大切だが、参加する人たちの情報交換の場が必要だ。

駅利用者を市街地に回遊 古賀氏

 中心市街地は佐賀駅南部、北部の広場整備が本年度末に完了するなど環境が変化している。佐賀駅の利用者は1日2万5千人。その人たちを中心市街地に回遊させることが肝になると思う。スポーツ、歴史、文化を生かしたイベントを行い、日常的に人が歩くようにしたい。またオフィスの空き室が多い。IT系企業の誘致でデジタル人材拠点をつくったり、駅周辺には女性活躍の場ともなるテレワークサテライトオフィスを整備したい。旧町村は移動手段の充実を図り、住み慣れたところで安心して暮らせるまちをつくりたい。

空港を物流拠点に生かす 馬場氏

 「人が多かった時代のにぎわいを取り戻したい」という声をよく聞く。周辺に人が行ってしまった。人が住むところ、佐賀駅など交通の接点に人が集まっている。これからの中心街は「住む」をコンセプトに住宅開発をするのが大きなキーワードになると思う。そこに子どもたち、高齢者の方々のケアができるような場所を一緒につくっていく。そうしたミニ開発を進め、人を増やす政策が必要。また、佐賀空港を物流拠点に生かすのは必須だ。佐賀の農産物を輸出し、海外からの物流の拠点としてポテンシャルを持っている。

ゼロカーボン目指したい 藤田氏

 世界の潮流であるゼロカーボンシティーを目指すことが大切だ。さらに一番大事なのは、佐賀空港へのオスプレイ配備の問題だ。一時期は良いことがあるかもしれないが、世界から見たとき、佐賀市を軍隊都市(アーミーシティー)にしてしまったら発展の方向性が違ってくると思っている。文化や芸術活動を支援し、佐賀錦など佐賀の工芸品を売り込む必要がある。2024年は国民スポーツ大会が佐賀の地である。老若男女の新時代の扉を開け、健康でスポーツを文化として楽しめる佐賀市にしたいと考える。

※回答は出馬意向が表面化した順

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