唐津市と玄海町の広域的な政策の展開を進めるために発足した唐松地域共生協議会=8月25日、唐津市役所

 唐津市と東松浦郡玄海町のトップ同士が広域の施策展開で意見を交わす「唐松地域共生協議会」が発足した。玄海町に立地する九州電力玄海原子力発電所を巡り、隣接する唐津市の意見反映を目的に市議会が働き掛けて3年がたち、協議の対象を原発に特化せず、観光や教育、福祉などの分野に広げ、唐津・東松浦地域のまちづくりに生かすことでようやく論議のテーブルができた。互いに胸襟を開いて議論し、双方の住民の暮らしを向上する施策につなげたい。

 協議会の設立は、唐津市は玄海原発から近い所で約500メートルに市域があるものの、立地自治体ではないため、九電にもの申す権限が制約されていることが背景にある。2017年に唐津市長、18年に玄海町長が交代し、新たなトップ同士で原発に特化した協議会をつくるよう市議会が18年、市長に要請した。再稼働など事前同意の範囲を立地自治体以外にも拡大した日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)の「茨城方式」を玄海原発にも求めることを意識していた。

 峰達郎市長は脇山伸太郎町長に打診したが、「原発に特化した協議会には応じられない」と固辞された。町側は「同意権の対象を決める権限は町にはなく、私たちだけでは話ができない」と説明し、膠着(こうちゃく)状態が続いた。事態打開をすべく、改選前の昨年12月、市議会は協議分野を広げて設置を求める報告書をまとめた。市側の譲歩により、玄海町も上場地区の一体的な観光振興に力を入れたい意向もあり、応じた経緯がある。

 両市町は、(1)第1次産業の発展(2)観光産業、商工業の振興(3)北部医療圏の医療体制の確保と対策(4)福祉の増進、教育環境の整備(5)エネルギー、環境分野、安全施策-の5分野で協議することで合意した。それぞれに分科会を設けて議論して副市長や副町長ら幹部による幹事会を経て、毎年11月にトップ会談を実施する。

 エネルギー・環境・安全の中に含まれる原発課題について、これまで非公式な形でしかなく、公式な協議の場ができて「情報の共有」が一歩進むことになると両者は口をそろえる。ただ、市議会からは他分野ばかりが議論されて、「原発の論議が置き去りにされないか」という懸念の声も上がっている。市議会玄海原発対策特別委員会の小委員会は課題整理で、議会として協議会の論議をチェックしていく重要性を指摘している。

 協議会は持続可能な地域づくりを目指すための仕組みである。峰市長は「互いを尊重し合い、踏み込んだ議論をしたい」と表明、脇山町長も「もっとスムーズにいろいろな話ができて協力し合える」と述べた。それぞれの住民の思いを代弁し、原発課題を含め、文字通り「共生」へ向けた協議を期待したい。

(辻村圭介)

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