堤体開削事業が完了したため池を見下ろす廣重和也さん=佐賀市大和町久池井の小川新堤

 記録的な大雨が近年頻発する中、使われなくなった農業用ため池を「廃止」する動きが広がっている。昔からある池周辺で宅地開発が進み、高齢化で管理が行き届かないなど、地域によって事情はさまざま。佐賀市や鳥栖市など県内各地では、堤防を切り取って水がたまらないようにする開削工事が進み、ため池決壊の危険性低減を目指している。

 ため池は県内に2665カ所あり、そのうち決壊時に人的被害が出る恐れがある佐賀県内の「防災重点農業用ため池」は1419カ所ある(3月末現在)。今年度から10カ年で29カ所が廃止に向けて動く予定で、ため池保全管理サポートセンターの担当者は「上流からの流入など入ってくる水は止められず、埋め立てるのは難しい。使われていないため池は堤防を開削して水路を造り、水をためない仕組みを検討することを勧めている」と話す。

 佐賀市大和町にある農業用ため池、小川新堤は満水面積0・8ヘクタール、有効貯水量2万4800立方メートル。明治期に造られたが、現在は周辺が宅地化して使われておらず、管理する小川生産森林組合の高齢化も進み、手入れをする農業者もいない。 

 ため池がある小川一区には約430軒の住宅があり、2018年7月の西日本豪雨で県外の農業用ため池が決壊する事例が相次いだことで住民の不安が募っていた。小川一区自治会と同組合は19年6月、市に改修を要望した。

 池の堤防をV字に開いて水を近くの今村川に流す工事は、20年4月に始まり、今年8月に完了した。開削工事費の約2千万円は国の補助金を活用し、川につながる約70メートルの水路を造る約500万円は佐賀市が負担した。

 総区長と同組合の組合長を務める廣重和也さん(66)は「今年の雨に間に合ってよかった」と胸をなで下ろす。「今年はため池の心配をせずに済んだ。地域の安全に向けた大きな一歩」と話した。

 県農山漁村課によると昨年度は佐賀市大和町、鳥栖市、西松浦郡有田町、嬉野市の開削事業が採択され、今年工事が完了した。本年度は佐賀市金立町、鳥栖市2カ所、伊万里市1カ所、西松浦郡有田町で採択され、計画が進んでいるという。(花木芙美)

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