孤立した住宅からボートで救助される人たち=武雄市朝日町甘久、8月14日午前8時半ごろ

 8月11日から降り続いた記録的大雨で佐賀県内に大雨特別警報が発令されてから、14日で1カ月になる。2019年8月の佐賀豪雨で被災した武雄市は再び深刻な水禍に見舞われ、「心が折れる」という言葉をよく耳にした。わずか2年で2度の被災に「気力が失われた」というのが正直なところだろう。生活者や事業者の支援に地域を挙げて取り組まなければならない。

 武雄市内の浸水被害は床上1273戸、床下390戸の合計1663戸。確定した数字ではないが2年前の被害を超えている。避難所に身を寄せている人は、13日現在で北方公民館の8世帯16人と、深刻な浸水被害を受けたわりには少ない印象を受ける。これは不自由な避難所よりも親せきや子どもの家に行ったり、新型コロナウイルスへの感染を恐れて、浸水していない自宅の2階で生活をする「在宅避難」の人が多いことを物語っている。

 罹災(りさい)証明書の申請受け付けは、8月18日から始まった。2年前に経験した人が多かったのか、初日から特に大きな混乱もなく、受け付けは順調に進んでいる。証明書の発行も9月から始まっているが、被災者の悩みはどこまで改修するかという点にある。2年前は“30年に1度”という認識でお金をかけて直したが、今回は経済的にそうもいかない。必要な部屋だけ修繕するか、浸水の心配のない所に引っ越すかという話も聞く。

 武雄市は災害見舞金を全壊10万円、床上浸水5万円、床下浸水1万円とし、2年前に被災した世帯には1万円を上乗せする。さらに開会中の9月議会に武雄に住み続けるための支援策を追加提案する。被災者に寄り添った血の通った政策になることを期待する。

 事業者の状況も深刻だ。国道34号沿いに店舗を構える人たちは悲鳴を上げている。こちらも2年前に数千万円かけて修繕し、営業を再開した。しかしコロナの影響で客足が遠のいたところでの被災に店主らは意気消沈している。すでに廃業を決めた飲食店や、撤退を決めた大手チェーン店もある。

 何とか踏みとどまり営業再開を目指す店主らにも迷いはある。再開してもコロナ禍は変わらず、六角川の改修が進まなければ再び浸水する恐れが大きい。ある店主は「売り上げが見込めないのに借金はできない。コロナの時のような給付金がほしい」と訴える。武雄市は県や国に働きかけ、事業者を救う手だてをつくることが必要だ。

 武雄市は2年前の豪雨を教訓に、災害に強い町づくりを進めていた。避難指示やボランティア運営など教訓が生きた点もあるが、今回、問われるのは「心が折れた」人たちをどうケアするかだろう。人とにぎわいがあってこその町づくりだ。武雄が持つ地域の力が問われている。

(澤登滋)

佐賀2021大雨
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