わずか2年で再び浸水被害に遭った「井手ちゃんぽん」。営業再開を目指し、店内の整理などを続けている=武雄市北方町

 武雄市北方町の国道34号沿いに並ぶ飲食店は、2019年の佐賀豪雨でも甚大な浸水被害を受けたが、今回の大雨で再び復旧を迫られることになった。「営業再開できたとしても、次はどうか…」。2年前の“傷”は大きく、店主それぞれの胸中は複雑だ。

 全国からファンが訪れるちゃんぽんの名店「井手ちゃんぽん」。社長の井手良輔さん(49)は「迷ったが、ここにとどまることにした。でも、六角川がこのままの状態なら移転も考える」と語気を強める。六角川の改修が進まないことに不満を抱いており、「堤防を高くしたり、ポンプの数を増やすなど、この30年余りでやれることはあったはず」と指摘する。

 「国道34号沿いのエリアは武雄の玄関口。インターチェンジ近くでこんなににぎわいのある地区はない。誰もここを離れたくはない。浸水対策さえしてくれれば、それでいいのに…」

 営業再開は11月上旬の予定。目標は定めたが、「来年の雨の時期までに目に見える対策がなければ、水の心配のない所に移転することもあり得る。もう次はない」と語る。

 焼き肉店「精養軒」は被災から9日後に店を再開した。店主の松江豊彦さん(67)は「被害は床下だったから何とか開けることができた」と話す。とはいえ、水は床上ぎりぎりまで迫り、湿気を含んだ床は今後、改修が必要になる。罹災(りさい)証明申請には「床上浸水0センチ」と明記したという。

 2年前も床下浸水だったが、今回ほどではなく、保険は使わず全て自己負担で修理した。「まだ店をやめるわけにはいかんという、気持ちの方が強い。でも、次に漬かったらもうやっていけない」。店は開けるが、これから台風シーズンだから不安は尽きない。「コロナ前の売り上げがあれば、浸水被害の借金ぐらい返すことはできる。でも今はそれさえも難しい状況」と表情を曇らせる。

 迷いながら店を開ける店主もいれば、自然災害だからと割り切って準備を進める店主もいる。居酒屋の店主は「保険も強化したし、書類はすべてデータ化した。店の壁は浸水してもすぐに取り替えられる材質に変えた。漬かったら次の手を考える。そうやって乗り切るしかない」と前を向く。

 別の店主は「コロナ対策のように、何にでも使える給付金が必要。今の支援策は書類のやり取りだけでも相当な負担。河川がすぐに改修されるとは思えない。それなら立ち直るための資金を援助してほしい」と行政の支援に注文をつけた。(澤登滋)

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