東京パラリンピックが閉幕した。コロナ下の厳しい環境だったが、多様性と調和、共生社会の実現に向けてメッセージを発信できただろうか。誰もが自分らしく生きられる社会。多様性や共生は、これからの重要なキーワードになる◆障害の有無だけでなく、国籍、人種、性別、宗教など、社会は多様な人たちでつくられ、動いている。パラリンピックを見ていると、改めてそう感じたが、そこで生きるとはどういうことなのか◆ベストセラーにもなったブレイディみかこさんの『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』を読み返した。福岡市出身で、イギリスで暮らすブレイディさん。中学生の息子が体験する人種差別や貧富の格差など、さまざまな問題に親子でぶつかっていく様子が軽やかに描かれている◆印象深かったのは期末試験で満点を取ったエピソード。第1問は「エンパシーとは何か」。エンパシーは「共感」と訳されるが、息子は「自分で誰かの靴を履いてみること」と答えた。英語の定型表現で、他人の立場に立ってみるという意味である。子どもの頃から教わってきたはずなのに、ときに忘れてしまっている◆パラリンピックの13日間、テレビ画面を通して多くの人が誰かの靴を履いてみただろう。その共感を長く胸にとどめたい。ひとまず、3年後のパリ大会まで。(知)

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