認知症の高齢者らが道に迷ったり、徘徊(はいかい)で行方不明になったりした際、早期保護につなげるツールとして二次元コードや登録番号を印刷した「高齢者見守りシール」を導入する市町が佐賀県内でも増えている。ただ、導入が進む一方、住民の認知度は高まっていないのが実態ではないか。高齢化が進行する中、お年寄りを住民一人一人が見守る取り組みは安心安全な地域づくりに有効なアイデアだ。導入市町はシールの認知度アップや浸透に力を入れ、有効性を高めてほしい。

 見守りシールはスマートフォンなどで読み取る二次元コードが印刷してあり、お年寄りの帽子やつえ、手押し車などに貼ったり、縫い付けたりしておく。保護した人が二次元コードを読み取ると家族にメールが届いたり、連絡先が表示されたり、家族とインターネット上の伝言板でやりとりできたりする。二次元コードを使わなくても登録番号を市や警察に照会できる。

 民間事業者が提供しているサービスで、今年2月に開始した鳥栖市は初期費用3万5千円とシールの印刷費を合わせ約21万円で導入した。県内では鳥栖市と同じサービスを嬉野市、多久市など8市町が利用開始、または業者が納入済みで、今後導入予定の自治体もあるという。佐賀市も別の社の見守りシールを導入している。

 便利だが、有効活用するにはクリアすべき課題も多い。まず、住民が「このお年寄りは保護が必要な可能性が大きい」と気付くには、見守りシールの存在が知られていなければならない。二次元コードを扱えない人も実際には多く、二次元コードを使わずに保護する方法も周知しておく必要があるだろう。シールの利用者も並行して増やしたいが、鳥栖市では利用者がまだ少ないといい、利用者を広げる取り組みも重要になる。

 シールの導入後、鳥栖市内では認知症患者への「声かけ訓練」が初めて開かれた。まず、参加者が感じたのは「声をかけた相手が認知症でなかった場合、失礼にならないか」という心配だ。アドバイザーは「その人が不安そうにしているかで判断しよう。認知症かどうかよりも、手助けが必要かどうかを重視して」と呼び掛けた。地域の見守りの輪を広げていくには、まず、こうした心構えから浸透させていかなければならない。

 訓練では認知症のお年寄りがパニックを起こさないよう、話を合わせて落ち着かせ、周りに誰かいたら支援を依頼しながら警察に通報する方法も練習した。通報後、警察が到着するまで、お年寄りをその場にとどまらせておくことも実際には容易ではないという。お年寄りを安全に保護するには、私たちが知っておかなければならないことも多い。

 県警によると2020年、認知症による行方不明の届け出は42人で、こうした事案は増えていくだろう。今後、住民ぐるみでお年寄りを見守る活動は、地域の安心感を高め、住みやすいまちづくりに貢献すると期待されるが、そのためには機運を高める取り組みが不可欠だ。見守りシールの導入市町は中心となって、講習会など住民が理解を深める機会を数多くつくれないだろうか。シールの導入に終わらず、有効に活用されるよう「意識」を吹き込む取り組みにも力を入れてほしい。(樋渡光憲)

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