工場が浸水し、復旧作業を続ける弘田傑さん。工作機械が全て水に漬かり、復旧には2カ月ほどかかると見ている=武雄市橘町

 記録的大雨で浸水被害が広範囲で発生した武雄市では、鉄工や機械、食品など製造現場への影響が深刻だ。「2年前が最悪だと思っていたのに…」。2019年の佐賀豪雨を踏まえた対応をしたにも関わらず、想定以上の浸水深に億単位の被害を覚悟する小規模事業者も。工場の生産停止で小売りへの商品供給が懸念されるケースもみられる。

 武雄機械金属工業会によると、加盟13社のうち7社が浸水被害に遭った。弘田鉄工所(武雄市橘町)では油の臭いが漂う中、弘田傑社長(40)が分解した工作用機械の部品を一つ一つ丁寧に拭き上げていた。

 さまざまな機械が動く際に回転を支える軸部品「シャフト」を生産しているが、加工機械12台が全て水没した。「2年前の被害をやっと乗り越えた矢先。オーバーホールで済んでも2千万~3千万円、全て買い換えとなると1億円ぐらいかかるのでは」と弘田さん。2年前は1週間ほどで復旧したが、今回は2カ月ほどかかる見通し。「機械を直しても、また水害に遭ったらと思うと…。この場所でいいのかも考えないといけない」と肩を落とした。

 破砕機メーカーの中山鉄工所(武雄市朝日町、中山弘志社長)も工場などが浸水した。佐賀豪雨の被災を教訓に防水板などを設置するなどして備えたが、担当者は「水位は前回よりも20~30センチほど高く、防水板を越えて水が入ってきた。全自動の防水板も開発しようとしていたが、間に合わなかった」と説明する。

 完成済みの製品を事前に待避させていたため、18日には出荷が再開できた。ただ、浸水した工場の工作機械の状態確認は今から。それを踏まえて生産再開の時期を検討していくという。

 食品工場では、被災による店舗への商品供給への不安が広がる。パン製造の「フランソア」(福岡県新宮町)の佐賀工場(武雄市北方町)も浸水し、商品や原材料を廃棄。製造機械も被害に遭い、復旧時期は見通せない。佐賀工場では、もちや団子など和菓子を製造し、九州北部を中心に出荷。「専用工場なので、他の工場で作れないものもある」(担当者)といい、小売りの現場にも影響は広がりそうだ。(大橋諒)

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