土砂崩れの恐れがあるため、公民館に避難している南下地区の住民たち=17日午後、嬉野市塩田町大草野

 佐賀県内を襲った記録的大雨は、17日で降り始めから1週間がたった。総雨量が最も多い嬉野市は、多数の土砂災害が発生。家屋や道路に亀裂が走り、地滑りの兆候がみられる嬉野町不動山大舟と塩田町大草野南下の両地区は、市の強い要請を受けて、対象の全世帯の住民が避難所や親類宅に身を寄せた。「崩れれば家は直撃だ」「集落に戻って暮らせるのか」。避難生活の長期化も懸念され、先の見えない状況に不安を募らせた。

 「連絡が来た時には全面通行止めまで30分くらいしかなくて。夏休みで遊びに来ていた孫を連れ、慌てて荷物をまとめ避難所に向かった」。大舟地区に住む70歳の女性は、食事を中断して家を出た15日の夜を振り返った。「景色と子育ての環境が気に入って36年前に買った家。戻れるといいけれど」と表情を曇らせた。

 33世帯84人が暮らす同地区では14日までに茶畑の土砂が崩れ、県道脇の小屋が倒壊。地元をよく知る消防団員らが、住民に避難を呼び掛けた。市や住民によると、崩壊した場所は土砂が少しずつ動いているとみられ、道路は亀裂が入り、波打つように壊れた所がみられた。家屋の破損や敷地の亀裂が多数あり、防火水槽も水漏れしているという。

 66歳の男性は、開け閉めができなくなったドアに応急の施錠をして家を離れた。「地面が動いているのか、家の床が盛り上がった。農機具も置いたままで、水につかった田んぼも心配。先のことを考えるとストレスがたまり、食事がのどを通らない」と吐露した。

 市では地区の調査を進める一方、避難が長びく可能性があるとして、避難者の受け入れを嬉野温泉旅館組合と協議。16日の会見で村上大祐市長は「仮設住宅も検討しなくてはならない段階」との認識を示した。区長の男性(67)は「自分たちではどうにもできない状況。調査結果を待つしかない」と話した。

 土砂崩れが起きた周辺の複数家屋で亀裂が見つかった南下地区は、11世帯30人が避難。のり面が崩れ、生活道路にひび割れが起きた。地区の公民館には10人ほどが寝泊まりする。馬場ハスヱさん(89)は「家の近くが崩れた。これからどうなるやろかね」。区長の鍋野広之さん(68)は「玄関先のタイルが割れたり、扉が閉まらなくなったりした家もあり、ぞっとした。谷になっているので土石流が起きないか心配」と話した。(古賀真理子、中島幸毅)

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