水が流れ込んできて、新品のゴザが散乱する店内。店主の村山直さんは「2年前の大雨で、新しくなった機械もだめになった」と嘆いた=15日午後2時ごろ、杵島郡大町町福母(撮影・鶴澤弘樹)

玄関横の壁に残った浸水の跡を指さす住民=16日午後3時37分、武雄市橘町片白(撮影・米倉義房)

 4日間にわたる大雨で深刻な浸水被害が広がった佐賀県武雄市と杵島郡大町町では15、16の両日、被災者が自宅や店に戻り、片付け作業を本格化させた。壁には2メートル近い高さまで水が襲った跡もあり、2019年の佐賀豪雨被災者は異口同音に「2年前の比じゃない」。降り続く雨に「もう水は襲ってこないだろうか。このままでは片付けも乾燥も進まない」と不安が漏れた。

 武雄市北方町の国道34号に面した店では16日、強い雨の中でも片付けが続いた。「井手ちゃんぽん」の井手良輔社長(49)は「2年前は1メートル、今度は1・3メートル」と浸水ラインを示した。佐賀豪雨では約2000万円を借り入れて再開したが、今回は「借金はできる。ただ、豪雨のたびに同じことを繰り返すになるようなら躊躇(ちゅうちょ)はある。今後のことはもう少し考えたい」と厳しい表情を見せた。

 近くの人形館ふじやの藤井信行社長(75)は「机の上のパソコンが浮いた。2年前にはなかったことで、水かさは30センチほど増した」と驚いた表情。全てが駄目になった約1500点の商品が散乱していた店の片付けを進めた。

 武雄市橘町では佐賀豪雨より浸水範囲が広がり、避難所にも水が入った。自宅を2メートルの高さまで水が襲った同町片白の松尾まゆみさん(58)は「ここまで来るとは…。2年前はリフォームしたけれど、もうしきらん」と肩を落とした。

 「2年前の倍」。大町町中心部の商店街で片付けに追われる多くの人たちから同じ言葉が漏れた。

 何度も何度も店の泥をかき出していた森永写真館の森永裕子さん(58)は「この前より1メートルは高い。水が胸まで来てリュックも背負えず、大切な物だけ頭に載せて避難した。もう泣くに泣けない」とぐったりした様子。別の商店主は「今度は床上まできた。数十年に一度といわれた佐賀豪雨からたった2年。今の雨に合わせた抜本的な対策が必要」と訴えた。

 大町町の下潟地区では被災の教訓からかさ上げして家を建て替えた人も多い。だが、今回はそれを上回る水が襲った。「1・5メートル上げて建て直し、まだ3カ月も住んでない。家電もみんな駄目」。水が引いてやっと16日から作業を始めた男性(33)は雨の中、ぼう然とした。

 両親の家を片付けに来ていた灰塚新一さん(43)は「2年前に経験した以上の被害。板や畳を張り替え、節約、節約で暮らしていたのに」と嘆いた。1990年豪雨でつかり、1メートル以上かさ上げした。それでも2年前は床上10センチ、今回は70センチまで来た。「新たに保険に入っていたけれど、2年もたたないうちに使うことになるなんて」と話した。

 今週も雨の予報が続き、家屋などの乾燥に欠かせない好天は見当たらない。浸水範囲も2年前より広がった大町町で商店主の一人は「片付けは進まないし、気分も晴れない。ボランティアも頼みたいが、コロナ禍でどうなるか…」と心痛した。(澤登滋、米倉義房、井手一希、小野靖久)

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