大町・ふるさと再発見編

 自分たちが暮らす地域の現状や課題を学び、将来はこうなってほしいという未来計画を描いてもらう「さが未来発見塾」。4期生となるのは県中央部に位置し、県内で最も面積が狭い大町町の中学生10人。今回は第1回ワークショップと取材活動を紹介します。人口流出や少子高齢化が深刻化している大町町の現状を直視し、理想とする未来像を探ります。

地元学講座Ⅰ 佐賀新聞西部支社 小野 靖久 記者

「安全安心な町」の視点必要

取材で感じた大町町の現状などを話す小野靖久記者=大町町総合福祉保健センター美郷

 大町町では杵島炭鉱が1909年から60年間操業し、当時の町の人口は2万人を超えていました。現在の人口は約6300人。10年間に約1000人のペースで減り続けています。2015年の国勢調査を見ると、人口減少率は佐賀県内の20市町の中で2番目に高い数字。65歳以上のお年寄りの比率を表す高齢化率も35・86%と県内で最も高くなっています。

 こうした課題に対し、町はいろんな策を講じています。例えば民間業者が2LDK以上のアパートを建てる際に、1戸あたり50万円を補助しています。固定資産税の減免や引っ越しの費用補助なども打ち出し、町外からの移住を促しています。子どもが生まれた時の祝い金も県内最高レベルに引き上げました。子育ての環境を整え、定住人口を維持する狙いがあります。

 隣の江北町は、県内でも数少ない人口を維持している自治体です。佐賀県の真ん中に位置し、バイパス沿いに商業地や住宅地が広がっています。大町町も県中央部という地理的な強みはあると思います。

 どんな町にしたいかと考える時、町の特徴を踏まえ、例えば「高齢者にやさしい町」など、暮らしやすさを主題にしてもいいかもしれません。「安全安心な町」の視点も必要です。2年前の佐賀豪雨で大町は大きな被害に遭いました。避けようがない自然災害に対しては、備えが大切です。大町町では防災ラジオを各家庭に配布し、消防団の格納庫にゴムボートを備えました。いろんな団体と災害時に協力してもらう協定も締結しています。防災マップで危険箇所を知っておくことも重要です。

 大町は小さな町だからこそ小回りが利き、大きな市町では取り組みにくい課題も、場合によってはいち早く施策に反映できます。限られた財政を、いかに有効に使うかが鍵になります。

 

地元学講座Ⅱ 福母八幡宮宮司 佐藤 美波 さん

あるものに目を向けよう

福母八幡宮の取り組みを語る佐藤美波さん=大町町総合福祉保健センター美郷

 福母八幡宮は866年創建で今年1155年目を迎えます。私は24歳で41代目の宮司になりましたが、その時に見えてきた課題があります。まず神社に一日中いても誰も来ないこと。そもそもどこにあるのか知らない町民もいるし、氏神様(地元の神社)と氏子(地元の人)の関係が薄くなっています。神社を知っていても、うっそうとして怖いとか、暗いとか、イメージは良くありませんでした。

 そこで、問題を解決し、その先にある理想と目標を掲げようと考えました。神社の見た目や環境を良くするため、毎日の掃除と建物の改修などを行いました。

 神社と氏子をつなぐ大きなきっかけはお祭りです。七夕祇園夏祭りを盛り上げようと、竹灯籠作りなどに取り組みました。大勢の人が竹灯籠の写真をSNSで拡散してくれることで「行ってみたい」と全国各地の人たちに感じてもらおうと企画し、知名度を上げるために最初にやったのはクラウドファンディングへの挑戦です。珍しかったので多くのメディアにも取り上げられ注目を集めることができました。それに合わせ、さまざまなイベントを開き、SNSでの情報発信を欠かさず行いました。目標は女性の参拝者を増やすことだったので、アジサイなど季節の花を使った花手水や、かわいいお守りや御朱印など、女性が喜ぶ「癒やし」を意識しました。

 神社と町の発展は大きく関係しています。神社からこの町をもり立てることで町の活気を取り戻すことができるはずです。ないものに目を向ければ不満しか出ないけれど、あるものに目を向けて大切に磨けば、夢中になっているうちに歩みを進めることができます。「夢中とは無敵」です。自分の心の声に耳を傾け、自分がやりたいことにどんどん挑戦してほしいと願います。

ワークショップ

 

 ワークショップでは塾生たちが大町町の魅力や特徴、課題を出し合い、情報を整理しました。縦軸を「魅力」と「課題」、横軸を「自分ごと(自分たちに身近なもの)」と「ひとごと(身近でないもの)」として配置し、大町の現状を可視化しました。

「魅力」と「課題」、「自分ごと」と「ひとごと」を考えながら付箋を貼る塾生たち=大町町総合福祉保健センター美郷

  佐賀大学経済学部の戸田順一郎准教授が「これからの議論に間違いも正解もないので、恥ずかしがらず意見を出し合おう」と助言。塾生たちは自分が思う大町の現状を語り合いました。魅力については「静かな環境」「住みやすさ」など暮らしの実感を挙げる声が多く、課題には「大きな店がない」「コンビニが減った」など、商業施設の充実を求める意見が目立ちました。また、北から南に傾斜した地形について「高低差があり、眺めがいい」「坂道が多くて不便」、県内で最小面積であることについて「町が狭い」「コンパクト」と、捉え方がプラスとマイナスの両面があることも特徴的でした。

取材

大町自動車学校・鶴田英司さんに聞く 夢を応援してくれる町に

 地域づくりを実践している人の生の声を聞き、学びを深める「取材」は、大町自動車学校代表取締役の鶴田英司さんから地域活性化のために取り組んできたイベントなどについて聞き、未来計画を描くヒントを探りました。

地域活性化の取り組みなどを話す鶴田英司さん=大町町の大町自動車学校

 鶴田さんは、自動車学校の教習車をアニメのキャラクター入りの「痛車」にしたイベントなどを紹介。ランニングと三輪車と階段ダッシュを組み合わせたスポーツイベント「ツール・ド・フクモ」について、「商店街を舞台にすることで商店街を盛り上げたかった」と狙いを語りました。

 大町町の魅力について「佐賀や武雄に近く、隣町の肥前山口駅から福岡にもすぐに行けて、意外と便利。都会とは違った空気があり、物事を落ち着いて考えることができる」と語りました。地元の人たちが口にする「何にもない」という言葉に対して、「見方を変えれば、余計な情報を省いた景色があるということ」と述べました。

 町の課題については「最近は元気のなさが目立つ。若者たちが簡単に夢を語りづらい空気があるのではないか」と指摘。塾生たちに「夢を応援してくれる町がいい町だと思う。みんなも夢を持ち、将来どうなりたいのか口に出してほしい」とアドバイスしました。

 

塾生メンバー(敬称略)

橋本 友姫
松永 小春
山下 さきほ
山中 翔輝
牛島 なつみ
大串 凜花
竹内 叶空
深江 唯姫
水本 勘太
横尾 治那津

 

【関連記事】
このエントリーをはてなブックマークに追加