多久・未来計画編

 自分たちが暮らす地域の現状や課題を学び、将来はこうなってほしいという未来計画を描く「さが未来発見塾」。実施第3弾となった多久市は東原庠舎中央校の8年(中学2年)の6人が参加しました。後編の今回は、未来計画を完成させたワークショップと、横尾俊彦市長への提案について紹介します。

<前回までの流れ>

 塾生6人は第1回ワークショップで、人口減少や少子高齢化など多久市の課題を学びました。また、多久ならではの魅力についても考え、「自然の豊かさ」や「歴史と伝統」などのほか、市民同士の「支え合い」も自慢の一つに挙げました。
将来こうなってほしいという未来像については「いろんな人にとって魅力的で住みやすいまち」「自分らしく過ごせるまち」の2項目を確認しました。
学びを深めるための取材は、多久市まちづくり協議会の笹川俊一さんに、ドローンを活用したまちづくりの取り組みなどを聞き、未来計画のヒントを探りました。

 

ワークショップ

実現へ 9種類のアイデア

第2回ワークショップでアイデアを出し合う生徒たち=東原庠舎中央校

 

 第2回ワークショップは4月7日、東原庠舎中央校で開き、自分たちが思い描く未来計画の策定に向けてアイデアを出し合いました。

 第1回ワークショップで確認した「いろんな人にとって魅力的で住みやすいまち」「自分らしく過ごせるまち」という方向性を具体化するために、各人が考える「魅力的」「住みやすい」「自分らしく」の事例を述べ合いました。

 その事例に沿って、実現するためのプランを考え、「ドローンの研究開発の分野でトップに立ち、多様な産業から注目を集める」「若者が注目する特産物をつくる」「森林を利用したアトラクション施設をつくる」など9種類のアイデアを盛り込みました。

 仕上げとなる4月14日の第3回ワークショップでは、最終案となる未来計画をまとめ、名称を「多久ステップアッププラン~よりよいまちにするために」と決めました。

 

プレゼンテーション

 

 
 
横尾俊彦市長に「多久ステップアッププラン」を提案する塾生たち=多久市役所

「誰もが自分らしく」 魅力的な多久に

 「多久ステップアッププラン」のプレゼンテーションは4月16日、多久市役所で行い、横尾俊彦市長に提案しました。

 塾生6人はプレゼンテーション用ソフトを使って、自分たちが練り上げた計画を説明しました。ワークショップで学んだ課題として、「人口減少と少子高齢化が、いろんな面で市民生活に悪循環を及ぼしている」と指摘。豊かな自然や人材といった既存の魅力に、小型無人機ドローンなどの新しい技術を融合させた地域の発展を提唱しました。

 横尾市長は「新しい感性で地域を明るくするためのヒントをもらった」と感想を述べ、「市役所の仕事や取り組みに生かしていきたい」と話しました。

提案書多久ステップアッププラン ~よりよいまちにするために~

 

【多久の現状】
 佐賀県の中央部に位置する多久市。豊かな自然に恵まれ、歴史と伝統が息づいたまちだと言える。大きな自然災害は少なく、治安もいいことから暮らしやすさには満足度が高い。孔子をまつった多久聖廟に象徴されるように「学問のまち」との位置づけもできる。そして何より誇れるのは、人の温かさと地域での支え合い。多久は人材の宝庫と言える。
 一方、市の人口は減り続けている。炭鉱で華やかだった昭和30年代、人口4万5000人を超えていたが、今年4月の推計人口は1万8215人。少子高齢化も県平均を上回るペースで進行している。
 人口減少や少子高齢化が、ほかの課題も引き起こしている。公共交通が不便になったり、空き家が増加したり、商業施設が充実しなかったり。自分たちが大人になった時に、多久で思い描いた人生プランが描けるのか、不安な要素も多い。これらの魅力と課題を踏まえた上で、私たちの未来計画を定めた。

【目指すまちの姿】
①いろんな人にとって魅力的で住みやすいまち

②自分らしく過ごせるまち

【実現に向けてのプラン】
プラン① ドローンのまち
ドローン研究・開発の拠点となることで、いろんな分野の産業から注目を集め、地域を活性化させる。配送だけでなく、農業やレジャーにも使途を広げる。

プラン② 若者が注目する特産品をつくる
若者層をターゲットにして、多久でとれるものを活用し、見た目にも「映える」特産品を開発する。

プラン③ 森林を活用したアトラクション施設
木々の間を渡り歩くアスレチックや、クライミングウォール、オートキャンプ場など外遊びを満喫できる施設をつくる。

プラン④ アーティストに移住してもらう
多久の歴史と伝統、文化とアートを融合させることで魅力度をアップ。

プラン⑤空き家・空き店舗の活用
リノベーションを行い、アーティストの活動拠点にも活用する。

プラン⑥ 子どもを産み育てやすい環境
出産・子育ての環境を整えることで、人口減少に歯止めを。

プラン⑦ 多様な職種に就けるまちに
中高生にアンケートを実施し、結果に沿った企業誘致を。また、若者が起業しやすいような支援策を。

プラン⑧ ユニバーサルデザインのまちづくり
市の施策の根底にユニバーサルデザインの視点を据える。

プラン⑨ 交流のまち
「市民同士の交流」「都市との交流」「国際交流」を進め、誰もが暮らしやすいまちを実現する。

 

 
【横尾俊彦市長の講評】

すてきな提案に 「仁」の心を添えて

 すてきな提案をいただき感謝しています。ふるさとについて学び、発見されたのは非常に貴重な機会だったと思います。少子高齢化や人口減、商業施設が少ないなど、いろんな課題の提起と同時に、自分たちなりに解決策を考えてもらい、ヒントになることがいくつかありました。

 例えば、自然を利用したアトラクション施設の提案は、私もちょうど似たようなことを考えていました。多久の豊かな自然と盆地の地形などを利用し、ちょっとルールを工夫すれば、マウンテンバイクやサイクリングのコースをつくることができます。市内には満月が自分の足下から昇ってくる感覚が体験できるキャンプ場があり、周囲には貴重な高山植物も見られます。小川にはメダカやホタルも生息しています。環境の良さや美しさを魅力と捉えてくれて、とてもうれしかったです。

 さらに、多久市民の優しさや思いやりの心に気づいてくれたのには、勇気づけられる思いです。私も人は宝だと思います。市民と一緒にいろんなことをやっていかなくてはいけないと考えています。

 「私たちの世代に的を絞ってアンケートをとってほしい」という提案も、ぜひやってみたいですね。皆さんの未来の活躍を目標に、いろんな工夫をしていくのが新しい時代の取り組みだと感じます。しっかりと受け止めて、市役所の仕事や市全体のさまざまな取り組みに生かしたいと思います。

 論語に出てくる「知・仁・勇」の意味を知っていますか。儒学では一番大事な教えです。まずは現状を「知る」こと。「仁」は家族や仲間、人々のことを思いやる優しい心。こうすれば幸せになると思ったら、難しい課題があっても、やり通すのが「勇」。市役所の仕事はこの繰り返しです。ぜひ今日いただいた提案をヒントに、「仁」の心を添えて、しっかりといろんな課題があっても努力をしていきたいと思います。

 

 

塾生の感想

松尾 塁 さん
 さが未来発見塾に参加して、多久の魅力のほかに、不便なところや改善していけたらいいところがすごく見えてきました。多久にはいいところもいっぱいあるので、それを生かして、市外や外国の人が多久にいっぱい訪れて「いいまちだな」「ここに住みたいな」と言ってもらいたいです。

原 亜莉紗 さん
さが未来発見塾に参加してよかったなと思いました。それは多久にどんな問題があるのか知らなかったからです。その問題を解決するためには、どんなことをしていかないといけないのかなど、6人で深く考えることができました。多久に住む人たちが、より自分らしく生活できるようになっていったらいいなと思いました。

市丸 央翔 さん
多久を知っているつもりでも、知らないことが多いことに気付きました。普段はよく考えたことがない課題や魅力を知り、市外の人の目線でも考えるなど貴重な体験になりました。多久には人口減少や高齢化などの課題もあるけれど、あらためていいまちだなと思いました。

山口 紗映 さん
 さが未来発見塾で良かったことが二つあります。一つ目は自分が生まれ育ったまちの魅力を再確認できたことです。自分が気づいていないところで、誰かが頑張って残した多久の魅力にも気づくことができました。二つ目は多久を変えるためにできることを見つけられたことです。これからも、この学んだ二つのことを意識して生活していきます。

水田 菜々美 さん
 多久市の課題で、特に気になったのは人口減少と少子高齢化です。公共交通が不便になったり、商業施設や遊べる場所が充実しないことは、その影響があるかもしれません。そのためには人口を増やし、魅力あるまちづくりが必要です。私が今回参加して、多久に関心を深めることができたように、多久に住む子どもたちから、発信していけるような取り組みを増やすべきだと思います

百武 駿弥 さん
このプロジェクトで私は、仲間と共に考えて、それぞれの意見を出し合うことの大切さ、物事に対して真剣に考えるという意味、そしてこの多久というまちには、たくさんの魅力や温かみ、志を持った人たちがいることをしっかり認識できました。私たちの生まれ育った多久。いろんな志を持つ人たちが、その実現に向かって努力する可能性にあふれたまちだと思っています。

 

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