有田・未来計画編

 自分たちが暮らす地域の現状や課題を学び、将来はこうなってほしいという未来計画を描く「さが未来発見塾」。実施第1弾となった有田町では中学生6人が参加しました。後編の今回は、未来計画を完成させた第2回ワークショップと、松尾佳昭町長への提案について紹介します。

<前回までの流れ>

 塾生6人は第1回ワークショップで、有田町の課題と魅力を学んだ上で、策定する未来計画の方向性として「有田の良さをもっと知ってもらう」「有田の自然などのいいところを生かし、それを積極的に発信することで、若者の注目を集め、まちを元気にする」と決めました。

 学びを深めるための取材活動では、まちなかで活動するNPO法人を訪れ、空き家活用や移住・定住策について意見を聞きました。まち歩きでは観光マップには載っていないような「隠れた名所」を探訪しました。

 

 

ワークショップ

課題解決へ  具体的プラン練る

「有田いいところプラン」のアイデアを出し合う生徒たち=有田町生涯学習センター

 第2回ワークショップは11月14日、有田町生涯学習センターで開き、自分たちが思い描く未来計画の策定に向けて論議しました。

 第1回ワークショップで方向性は確認しており、これまで学んだ有田町の課題をどんな手法で解決していくかという具体的なプランを出し合いました。「有田のいいところを生かす」だけでなく、これからの政策によって「有田のいいところをつくる」ことにも重点を置き、実現のための重要な手法として「いま以上に積極的な情報発信」もポイントとしました。

 有田ならではの「いいところ」にこだわったことから、未来計画の名称は「有田いいところプラン」に。塾生それぞれが出し合ったアイデアをまとめ、プレゼンテーション用ソフトで提案することにしました。

 

プレゼンテーション

 

 未来計画「有田いいところプラン」のプレゼンテーションは12月13日、有田町生涯学習センターで行い、有田町の松尾佳昭町長と栗山昇教育長に提案しました。

 塾生たちは緊張の面持ちでしたが、はっきりと分かりやすく、自分たちが考えたさまざまなプランを説明。最後は一人ずつさが未来発見塾で体験したことについて感想を語りました。

 松尾町長は「私たち世代では出ない面白いアイデアを頂きました。提案を何らかの形で具現化できるよう考えたいと思います」と若い世代の柔軟な発想に関心を寄せていました。

提案書有田いいところプラン ~若者の手で魅力ある有田に~

【有田の現状】
 有田町は1985年をピークに人口減少が続き、今年10月1日の推計人口では2万人をきっている。このまま人口が減っていくと、人手不足が加速し、伝統産業の有田焼や農業が衰退する恐れがある。特に若者の都市部への流出が顕著で、進学や就職で有田を離れた人たちが再び帰ってこないケースが多い。

 そのほかにも、若者たちが遊べる場所がない、空き家が増えている、交通の便が悪いなどの課題は山積している。

 一方で、他にない魅力も多い。何といっても日本で初めて生まれた磁器「有田焼」は400年超の歴史を誇る。有田のまちなかには、有田焼の文化に根付いたアートがあふれている。ほかにも、自然の豊かさや、窯業を中心にした豊富な人材、多様な食材などは有田ならではの魅力と言っていい。

 こうした課題や魅力を踏まえて、私たちの未来計画を定めた。

【重点項目】
①有田の「今あるいいところ」を生かすと同時に「新たないいところ」をつくる
②情報発信して、多くの人に有田を知ってもらう

【目標】
人口減少を抑え、有田を若者が元気なまちにする

【実現に向けてのプラン】
プラン① 「駅を楽しく」
JRやMR(松浦鉄道)の駅のホームに有田焼のデザインなどでSNS映えする明るい絵を描き、観光客を呼び込む。駅のホームに有田焼のタイルでQRコードをつくり、スマホをかざすと有田の情報が出てくるようにする。

プラン② 「有田づくしの宿」
空き家を再生し、民泊施設をつくる。器と食材は全て町内のものでおもてなしする「有田づくしの宿」にする。また、絵付けや転写シート、アクセサリー作りなど、有田焼の体験も楽しんでもらう。

プラン③ 「まちなか託児所」
有田陶器市には大勢の家族連れが訪れるが、小さな子どもを連れて、混雑する中を見て回るのは難しい。そこで、まちなかに託児所を開設し、有田焼を楽しんでもらう環境をつくれば、子育て世代の人たちにも有田ファンを増やせる。

プラン④ 「棚田に絵や文字を」
棚田に稲で絵や文字を描く。農家以外の広い世代の参加も促すことで、棚田のPRだけでなく、若者の就農についてもPRする。

プラン⑤ 「アートイベント」
まちなかにアートがあふれる有田。そこで育った町民にはアートのDNAが息づく。子どもたちからシニアまで世代を超えて参加できるアートイベントを開く。

プラン⑥ 「広く情報発信を」
マスメディアに取り上げてもらうよう工夫して情報発信を強化する。まずは観光客に来てもらい、リピーターになってもらう仕掛けづくりも大事。

プラン⑦ 「SNSを活用」
今は誰もがSNSで情報発信できる時代。みんなが有田の宣伝マンになる。SNSの「#(ハッシュタグ)」で有田の情報を発信する「ハッシュタグ宣伝隊」をつくり、組織的な戦略で有田をPRする。

 

松尾佳昭町長の講評

若い感性、 まちづくりに生かしたい

 素晴らしい提案をありがとうございます。

 駅のホームをアートで明るくしたり、有田焼のタイルを使ったQRコードで情報発信するといったプランは、若者ならではの視点で、大人ではなかなか出てきません。いろいろな制約も考えられますが、何らかの形で具現化できないか考えたいですね。「有田尽くしの宿」や「まちなか託児所」なども、すごくいいアイデアだと感心しました。

 SNSなどを使った情報発信についても、仕組みづくりを考えることが大事ですが、どうしてもおじさんたちの考えは固いので、皆さんのような若い感性を持った人たちの知恵を生かしていきたいと思っています。

 アートというキーワードもありました。科学(サイエンス)、技術(テクノロジー)、工学(エンジニアリング)、数学(マスマティクス)の頭文字を取った「STEM(ステム)教育」という米国の教育モデルがありますが、私はアートを加えた「STEAM(スティーム)教育」を有田で実践したいと考えています。ものづくりの町の有田で、アートを教育に反映させることで、わくわくする楽しい町になると思います。

 今日発表してもらった6人は一つのチームです。これからも情報交換しながら、こんな町にしたいということがあれば提言していただきたいです。

 今回皆さんが取り組んだことは一つの挑戦です。皆さんがいつでも挑戦できる環境を、町長としてつくっていきますので、どんどんチャレンジし、有田を変えていってほしいと思います。変わることが有田の力になるはずです。

 それぞれが自分の目線で考えてくれたこの提案を反映させ、できるだけ柔らかい頭で、温かいまちづくりを進めていきたいと思います。

 

 

塾生の感想

多久島 奈菜 さん(有田中2年)
 さが未来発見塾で、有田の現状やいいところを知ることができました。その中でも、空き家を使って地域おこしをしている上野菜穂子さん(NPO法人灯す屋事務局長)の話はとても興味深く、これからの有田についてどのような問題があるのかが分かりました。若い人が中心になって、たくさんの人が有田に来てもらえるようにしたいと思いました。

引田 天音 さん(有田中2年)
 今まで有田町で生まれ、暮らしてきましたが、こんなに自分たちの町について調べたり、考えたりしたことはありませんでした。自分たちの町を自分たちでより良くしていくために、これからも有田の魅力を探していきたいと思います。

 

深海 日菜多 さん(有田中2年)
 有田町の未来が高齢者や私たち、そして、もっと下の子どもたちにとっても、より良い町になればいいなと思っています。そのために私たち中学生にできる町おこしに協力できればいいと思いました。

松本 果奈 さん(有田中2年)
 これまでに何度かこのような企画に参加し、有田について学びましたが、まだ知らないことがたくさんあることに気付き、まだまだ有田について知りたいと思いました。そして、今の有田の良さを取り入れ、何年後かには、今よりもっといい有田町になってほしいと思いました。

川久保 光莉 さん(西有田中1年)
 私は今まで有田町は有田焼と自然しかない町だと思っていました。しかし、さが未来発見塾に参加したことで、その有田焼や自然も、とても魅力的で人を引き寄せる力があり、有田の持つ強い武器なのだと気付きました。私たちが話し合って考えた未来計画が実践されて、誰でも楽しく過ごせて活気ある有田へと発展してほしいと思いました。

川久保 有華 さん(西有田中1年)
 今まで有田についてこんなに深く考えたことはありませんでした。さが未来発見塾に参加したことで、有田の知らなかった課題やいいところを知ることもできました。取材や話し合いを通してみんなと立てたこの未来計画が有田の発展に少しでも役に立てばいいなと思います。そして未来の有田が今よりもっと魅力的で素晴らしい町になってほしいです。

 

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