嬉野・未来計画編

 自分たちが暮らす地域の現状や課題を学び、将来はこうなってほしいという未来計画を描く「さが未来発見塾」。実施第2弾となった嬉野市は嬉野高校の2年生4人が参加しました。後編の今回は、未来計画を完成させた第2回ワークショップと、村上大祐市長への提案について紹介します。

<前回までの流れ>

 塾生4人は第1回ワークショップで、嬉野市の課題と魅力を学びました。豊かな地域資源を生かしきれていない課題の原因に「情報発信力不足」を挙げ、「嬉野の〝うれしい〟をSNSで発信すること」を未来計画のテーマに選びました。

 学びを深めるための取材活動では、ビジネスやまちづくりにSNSを活用している実践者2人から話を聞き、ヒントを得ました。

 

ワークショップ

観光地の在り方も論議

第2回ワークショップでアイデアを出し合う生徒たち=嬉野市中央公民館

 第2回ワークショップは2月4日、嬉野市中央公民館で開き、自分たちが思い描く未来計画の策定に向けてアイデアを出し合いました。

 第1回ワークショップで確認した「SNSを活用し、嬉野の魅力を情報発信する」という方向性に加え、取材で浮上した今後の観光地の在り方についても意見交換。「高校生にできること」の視点で論じ合い、高校生がまちなか(温泉街)にいる光景をつくり、にぎわいを創出するプランを考えました。廃業した旅館などを活用した高校生の拠点づくりなどの案のほか、男子生徒2人が部活で研究していることを生かして、マイコンカ―で猫の目線での動画を撮影するアイデアなどを盛り込みました。

 後日、生徒たちは計画について最終作業を行い、未来計画は「うれしのあったか未来計画」と命名。サブテーマに「SNSで嬉野のぬくもりをお届け」としました。

 

プレゼンテーション

 

村上大祐市長に「うれしのあったか未来計画」を提案する塾生たち=うれしの市民センター

 「うれしのあったか未来計画」のプレゼンテーションは2月20日、うれしの市民センターで行い、村上大祐市長に提案しました。

 塾生4人はプレゼンテーション用ソフトを使って、自分たちが練り上げた計画を説明。ワークショップで学んだ課題と魅力や、取材で実感した嬉野の魅力発信の必要性を述べ、「自分ごと」として考えた高校生が主役となるプランを発表しました。

 村上市長は「今日が終わりじゃなく、今日からがスタート」と述べ、今後も議論を継続したい考えを示しました。

提案書うれしのあったか未来計画~SNSで嬉野のぬくもりをお届け~

【嬉野の現状】
 「日本三大美肌の湯」として知られる嬉野温泉や、嬉野茶など、嬉野市には地域資源が豊富にある。2022年秋には長崎新幹線・嬉野温泉駅が開業予定で、これを観光や産業に生かすことで、ますます地域の発展が望める。
 一方、嬉野市の人口は1985年の約3万3000人から減少を続けている。25年後の2045年には1万8000人を切ると予測される。特に20~30代の女性が少ないことが影響し、日本創生会議が定義づけた「消滅可能性都市」に含まれる。
 主産業の一つである観光の面でも岐路に立たされている。日韓関係の悪化による韓国人観光客の減少や、このコロナ禍での大打撃など、社会情勢に左右される観光の弱点が浮き彫りになっている。
 これらの魅力と課題を踏まえた上で、私たちの未来計画を定めた。

【重点項目】

①市民とともに生きていく観光を
 市民生活と観光を同じ枠の中で考える。高校生がまちなか(温泉街)にいるという光景をつくり、にぎわいの創出につなげる。高校生が主体となって若い世代がまち歩きをするようなアイデアを出し合う。

②高校生自らが魅力の発信源に
 SNSや動画などのデジタルツールの活用法や戦略を研究しながら、「住み続けたい」「移住したい」と思えるような嬉野の魅力を、より多くの人にアピールする。

【実現に向けてのプラン】
プラン①新たな温泉の楽しみ方
・プロジェクションマッピングで描いた幻想の世界の中で入浴
・浴場に大型スクリーンを設置し、映画や音楽などを楽しむ

プラン② 新たな情報発信戦略
 廃業した温泉旅館や商店をリノベーションし、「うれしの情報発信研究所」(仮称)を設立。嬉野高校を中心に、市民や企業、嬉野市が一体となって運営する。SNS戦略の研究のほか、発信者やユーチューバーの育成、動画の撮影・編集スタジオ、利用の安全性に関する研究、eスポーツへの取り組みなどの機能を持たせ、高校生のにぎわいづくりの拠点にする。

プラン③ 高校生ならではの発想でバズる発信を
 嬉野高校電気研究部が取り組んでいるマイコンカ―などの技術を使って、地面すれすれの角度から嬉野のまちを動画で撮影。猫の目線から見た「うれしの猫さんぽ」としてシリーズ化する。

 
 
 
 
 
 

日常の風景(左)が猫の目線に変わると斬新な風景に(右)

 

村上大祐市長の講評

「私がやります」の覚悟で取り組もう

 苦労の跡が至るところにうかがえるような発表でした。

 私としては、ここで聞いて「よかったね」で終わりにするつもりは最初からありません。聞いたからには実現するという思いで、発表の日を心待ちにしていました。

 温泉プロジェクションマッピングなど、いろいろな提案をいただきましたが、一番面白いと思ったのは、マイコンカ―を使って猫の目線でまちを見るというアイデア。今すぐにでも実践してみたいと感じました。

 皆さんが苦心して作り上げた発表ですが、たった一言でそれを満点にする魔法の言葉があります。それは「私がやります」という一言です。その覚悟を持っていただきたいというのが、今の正直な気持ちです。

 皆さんが取材で話をきかれた中林さん(分校カフェharuhiオーナー)と北川さん(旅館大村屋社長)も「自分がやります」という覚悟で取り組んでこられたからこそ、結果を残されてきました。その強い気持ちをSNSに乗せて発信したから相手に響いているということだと思います。SNSはあくまで道具でしかありません。最も大事なのは、まず自分が何を伝えたいのか、熱い思いを相手にぶつけることです。

 温泉街に高校生が出ていって何をするのか、どんな仕掛けがあれば自分たちだけでなくて友だちも来てくれるかというのも、これから一緒に考えていきたいと思います。例えば、足湯などは人の足を止める力はあると思うので、そこにマイコンカ―のコースを置いてもいいと思うんですよね。私たちと一緒に実現できる方向でやっていきたいと考えています。

 世の中のことが分かり始める高校生ぐらいの頃は、「そうは言ってみたものの、実現できないんじゃないかな」と、できない理由を探して自分を納得させる年頃でもあります。何か自分が役割を果たせるはずだとポジティブに考えて、できる理由を探せる大人になってほしいと思います。

 今日で終わりではなく、今日からがスタートです。一つ一つの取り組みについて、一緒に議論していきましょう。

 

塾生の感想

南 八雲 さん(電気科2年)
 新型コロナ禍で、地元に目を向ける機会が多くなり、嬉野のいい面も悪い面も見えてきました。さが未来発見塾に参加し、課題を少しずつでもいいから解決していくことを考えました。自分は将来、嬉野に大きな物流センターをつくりたいと思っています。それを実現することで、嬉野の課題を少しでも解決できればいいと思っています。今回はとてもいい経験になりました。。

田口 琉我 さん(電気科2年)
 今まで知らなかった嬉野の魅力や課題を見つけるとともに、嬉野市民の温もりを感じ取ることができました。ふだんではできない取材などの体験や、高校生だからこそのアイデアを考えたのもいい経験になりました。
 自分が思う嬉野の未来像として、観光客や市民の笑顔であふれかえり、みんなが嬉野の温もりを感じられるような温かい都市になってほしいと思いました。

馬場 加奈 さん(情報ビジネス系列2年)
 さが未来発見塾を通して、嬉野のことがさらに好きになりました。今の嬉野には課題があるのは確かですが、課題以上にたくさんの魅力があります。魅力を知ることで、他人に教えることができるので、まちづくりでは情報発信は不可欠だと思いました。観光客だけでなく、嬉野市民も「うれしい」を共有できる、そんな嬉野市になってほしいです。そして、新幹線・嬉野温泉駅の開業で、さらににぎわうようになればいいなと思います。私も、「うれしい」があふれるまちづくりに貢献していきたいです。

中島 彩華 さん(情報ビジネス系列2年)
 地元・嬉野のいいところを改めて知り、これからの嬉野をどうしていきたいのか、高校生の目線で伝えることができました。この活動で得たことをこれからの生活に役立てていきたいと思います。私は和太鼓部に入っています。コロナの影響で多くのイベントが中止になりましたが、それに負けずに一生懸命練習しています。嬉野がたくさんの観光客でにぎわい、明るいまちになることを願い、今後も精いっぱい努力をしたいと思っています。

 

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