『小式部』の一場面(佐賀県重要文化財 多久家資料 多久市郷土資料館蔵)

 奈良絵本とは、室町時代後期から江戸時代前期頃まで製作されていた、彩色された絵入りの手描きの本をいい、題材はおとぎ話、歌物語、軍記物など多岐にわたっています。佐賀県重要文化財多久家資料には、浦島太郎の物語『うらしま(浦島)』、京都・當麻寺の當麻曼荼羅にまつわる『中将ひめ(中将姫)』、そして紫式部・和泉式部・小式部内侍が登場する『小しきふ(小式部)』があります。

 『小式部』では史実と異なり、紫式部と和泉式部を母子とし、和泉式部の娘小式部内侍との親子三世代の物語となっています。和歌を詠み、和歌の力で神仏や人の心を動かし、幸福や利益が得られるという歌徳説話を中心に、和泉式部の夫藤原保昌の酒呑童子退治や、伊勢物語などが盛り込まれており、美しく色鮮やかな11枚の挿絵が目を楽しませてくれます。

 『小式部』は全国で7点、挿絵入りだと多久本を含めて2点しか確認されていない、大変貴重なものです。多久市郷土資料館で現在開催中の夏季企画展「紫式部和泉式部小式部」物語展では、『小式部』の全文と挿絵を、現代語訳を添えて展示しています。雅な物語の世界に遊んでみませんか。

 多久市郷土資料館夏季企画展「紫式部和泉式部小式部」物語展は、9月26日(日曜)まで開催しています。

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