嬉野・ふるさと再発見編

自分たちが暮らす地域の現状や課題を学び、将来はこうなってほしいという未来計画を描いてもらう「さが未来発見塾」。2番目の実施自治体となる嬉野市での第1回ワークショップと取材活動の様子を紹介します。塾生は嬉野高校の2年生4人。人口減少が見込まれる嬉野市の課題を直視し、「自分ごと」として課題解決の道を考えました。

地元学講座Ⅰ 佐賀新聞武雄支社嬉野担当  松田 美紀 記者

観光資源、どう生かせるか

松田美紀記者(中央奥)の話に耳を傾ける塾生

 1970(昭和45)年の国勢調査で嬉野(旧嬉野町と旧塩田町)の人口は3万2992人、2015(平成27)年が2万7336人なので5千人以上減っています。特に20~30代の女性については、総人口に占める割合で全国平均や県平均を下回っており、今後の人口減少にも影響が及ぶ恐れがあります。

 人口減少に比例するように、空き家が増えています。市が18年に調べたところ、空き家は482軒。空き家は景観を損なうだけでなく、倒壊の危険性や自然災害で被害を拡大させる要素もあるので、対策が必要です。

 嬉野市と言えば、嬉野温泉やうれしの茶などの観光資源がたくさんあります。コロナ禍前は、毎年200万人前後の観光客が訪れていました。海外からの観光客では韓国からの観光客が一番多かったのですが、日韓関係の悪化で団体客が減りました。

 嬉野を訪れる観光客の目的は温泉が一番なので、温泉地としての強みをどう生かせるかが重要です。コロナ禍で観光客が激減しているので、感染症がある中での観光の在り方を考えていくことが求められます。

 22年秋には新幹線の「嬉野温泉駅」が開業します。駅を核として、どんなまちづくりをしていくかという論議も活発に行われています。駅から温泉地まで歩いて行くには遠いので、観光の動線をどうするか、どんな交通システムが必要なのかなどの視点は重要です。駅前には公園や店舗、直売所などの整備が進められます。魅力的な駅前は観光客にとっても、地元の人たちにとっても大事なことです。皆さんたち若者からのアイデアも取り入れながら、考えていけたらいいのかもしれません。

 

地元学講座Ⅱ 嬉野市広報・広聴課 副課長  中島 隆二 さん

シティプロモーションで課題解決を

シティプロモーションについて説明する中島隆二副課長

 「うれしいを、いっしょに」をキャッチフレーズに、嬉野をブランドとして日本中、世界中に発信する「シティプロモーション」に取り組んでいます。「嬉」の漢字が自治体名に入っているのは全国唯一なので、日本で一番うれしいことがいっぱいあるまちを市民と一緒につくりたいと思っています。

 人口減少の課題を解決し、うれしさがあふれるまちにするには、「嬉野にずっと住み続けたい」「移住したい」という人を増やすことです。そのために嬉野の魅力を伝えるのがシティプロモーションです。

 最近、女子野球タウン構想を始めました。スローガンは「女性が喜ぶまちづくりを女子野球とともに」。漢字を組み合わせると「嬉野」になります。目指すのは、女性が野球をするまちではなく、女性がきらめくまち、女性が住みやすいまちです。嬉野市は20~30代の女性層が少ないですが、出産する世代の女性に住んでもらうことが、人口減少の課題解決につながるのです。

 女子野球日本代表は世界大会6連覇中で、若い選手の中にはSNSで世界中に数十万人のフォロワーを持つ人もいるそうです。「嬉野すごい」と世界にPRしてくれるという期待もありますし、コラボ商品をつくったり、イベントなどいろんな「うれしい」を、「いっしょに」できると考えています。

 シティプロモーションは「課題のピックアップ」「解決のためのネタ作り」「効果的なPR方法」の三つを押さえることがポイント。「実現は難しいよね」とブレーキを踏んでしまえば、成功しません。まずやってみて、失敗しても次に生かせる。やったもん勝ちです。高校生ならではのアイデアと可能性に期待しています。

ワークショップ

 

 ワークショップでは塾生たちが嬉野の魅力や特徴、課題を出し合い、整理しました。縦軸を「魅力」と「課題」、横軸を「自分ごと(自分たちに身近なもの)」と「ひとごと(身近でないもの)」で配置し、嬉野市の現状を可視化しました。

 塾生によるディスカッションでは、アドバイザー役の戸田順一郎准教授(佐賀大学経済学部)が「自分ごととして考え、高校生の君たちでしか導き出せないアイデアをどんどん出し合いましょう」とアドバイス。塾生たちは「温泉やうれしの茶などの地域資源がたくさんあるのに、全国的にはまだまだ知られていない」「人口減少を食い止めるためには、嬉野を気に入った人に移住してもらうことが必要」などと意見を述べ合いました。

嬉野の「魅力」と「課題」を付箋に書いて貼る塾生=嬉野高校塩田校舎

 「情報発信不足」を課題に挙げ、自分たちの世代の情報収集の実情を踏まえ、「嬉野の〝うれしい〟をSNSで発信すること」をテーマに選定。市内でSNSによる情報発信を実践している人を取材してヒントを得ることを決めました。

取材

地元実践者に魅力伝えるヒント学ぶ

 「未来計画」をより具体的なものにするための「取材活動」は、ビジネスと地域づくりの視点で嬉野の魅力を発信している実践者2人に話を聞きました。

SNSを使った情報発信についてアドバイスする北川健太社長(右)=嬉野市の旅館大村屋

 嬉野温泉の旅館「大村屋」の北川健太社長は、SNSの活用について「いろんな人たちと出会って、一緒に楽しんで、考えて、という基本的な部分はアナログの世界と変わらない。コミュニケーションが重要」と心得を伝授した上で、「動画は多くの人たちの目に留まる。これからはもっと動画の時代になる」と助言。自らの経験をもとに、今後の観光地の在り方や、高校生だからこそ可能な「バズる情報」についてヒントを示唆しました。

中林正太さん(左)と写真に収まる塾生=嬉野市の分校cafe haruhi

 吉田小学校春日分校跡を活用した分校カフェ「haruhi」を運営する中林正太さんは、何を発信するか目的によってツイッターやインスタグラムなどのSNSを使い分けていることを紹介し、「それぞれの本質を知っておかないと、発信の仕方を間違ってしまう恐れもある」とアドバイス。SNSをブランディングに活用するには「一貫性をもって発信することが大事」と話しました。  塾生たちは「お二人のアドバイスを参考に、SNSで嬉野を元気なまちにしていくプランを考えたい」と未来計画策定に意欲を見せていました。

 

塾生メンバー(敬称略)

【嬉野高校】

2年 中島 彩華
2年 田口 琉我
2年 馬場 加奈
2年 南 八雲

 

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