実家の片付けで出てきた古書を調べてほしいと「こちさが」に依頼した林茂子さん=伊万里市の自宅

1908(明治41)年に発行された『佐賀県軍人名誉肖像録』=佐賀県立図書館

1908(明治41)年に発行された『佐賀県軍人名誉肖像録』=佐賀県立図書館

 「実家を整理していたら、日露戦争に関係する古い本が出てきた」という情報が、佐賀新聞「こちら さがS編集局」(こちさが)に寄せられた。佐賀県出身の軍人の肖像写真や軍歴が約2600人分掲載されているが、表紙が取れて書名が分からないという。日露戦争があったのは1904(明治37)~05年で1世紀以上前。どのような本なのか、取材に向かった。

 情報を提供してくれたのは伊万里市立花町の林茂子さん(62)。本は、空き家になった市内の実家の整理をした際、座敷のたんすから出てきた。

 大きさはA5判ほどで、表紙に加え、巻頭と巻末もなくなっていた。残っている約1300ページには軍人の肖像写真と名前、住所、軍歴が1ページに2人ずつ、県内の地域別に載っている。軍歴から日露戦争に赴いた人たちと読み取れた。

 林さんは先祖が載っていないか調べたが、確認できず、誰が何のために所有していたのかも分からずに扱いに困った。インターネットで調べようにも書名が分からず「新聞社だったら分かるかも」と思い、「こちさが」に連絡した。

 記者が本の特徴を基にネットで検索すると、それらしきものがオークションサイトに出品されていた。書名は『佐賀県軍人名誉肖像録』。県内の公立図書館では県立図書館が1冊所蔵し、林さんの本と照合して同じものと分かった。

 この本は日露戦争の終結から3年後、東京の会社が出版した。林さんの本では抜け落ちていた序文を読むと、戦争の勝利を記念し、従軍した本人らから写真を集めて作ったとみられる。国立国会図書館のデータベースで調べると、鹿児島県や新潟県などでも同じような本が出版されていた。

 国文学研究資料館の加藤聖文准教授(日本近現代史)によると、当時は戦勝ムードに乗り、兵士を顕彰する本の出版が相次いだという。「本は国民が日露戦争とどう向き合い、戦勝気分で盛り上がったのかを示す資料になる」と説明する。

 取材の結果を聞いた林さんは「どのような本か分かってよかった。しばらく手元に置いておきます」と話す。本を見つけてからこの間、時間があると一人一人の写真を眺め、多くの若者が戦場に駆り出されたことに思いをはせた。

 日露戦争で日本は約8万5千人の戦死者を出したにもかかわらず、大国ロシアへの勝利に国中が熱狂し、覇権主義を強めていった。31(昭和6)年には関東軍が満州事変を起こして中国大陸への進出を拡大させ、一般人を含め約310万人が死亡したアジア・太平洋戦争に突入していくことになる。(青木宏文)

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