「授業についていけません」「今日一日、先生が何を言ってるのか、ひと言もわかりませんでした」。放課後に集まってきた子どもたちが口々に訴える。森絵都さんの小説『みかづき』はそんな場面から始まる◆作品の舞台は学習塾。昭和30年代後半、塾を立ち上げた夫妻と家族の物語で、高度経済成長の流れに乗って広がった学習塾の状況が描かれている。学校を太陽、塾を月に例え、太陽が照らしきれない子どもたちを照らす月を目指す夫と、経営に重きを置く妻。二人の進む道は分かれていく◆大学・短大の進学率をみると、昭和30年代半ばは10%程度だったが、40年代になって急激に上昇した。その後も緩やかに伸び、現在は60%ほどになっている。その過程では「詰め込み教育」や「落ちこぼれ」が社会問題になった◆今も基礎学力が身につかないまま高校に進む生徒はいる。そうした生徒のために編集した来春の教科書が検定に合格している。「数学1」には2桁の足し算や引き算、九九などの演習問題が並ぶ。「学び直し」というそうだ◆先日、小学校で話をする機会があった。子どもたちはいきいきと学んでいたが、中学、高校と進むうち、どこかでつまずくかもしれない。学校が太陽にも月にもなって学びを支える。置いてきぼりにしないように、照らす光は多彩な方がいい。(知)

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