東京五輪が開幕した23日、佐賀県内でも聖火ランナーらが万感の思いで開会式のテレビ中継を見つめた。祝祭ムードの一方で、開会式ショーディレクターの解任など直前までごたごたが続き、コロナ禍も暗い影を落とす。1年遅れの異例ずくめの祭典が始まった。

■つないだ炎再び

 57年前に続き、今回も聖火ランナーを務めた三養基郡上峰町の原槙和彦さん(76)。「自分がつないだ炎が聖火台にともされた瞬間は、本当に感慨深い」と、当時ブラウン管で見た開会式と重ね合わせながら、自宅から見守った。前回は高度成長期の真っただ中。敗戦からの復興を、世界に向けて高らかに宣言した五輪でもあった。

 「街中お祭り騒ぎ。東京タワーや新幹線もでき、どこか浮かれた気分だった」。しかし、今回は盛り上がりがもう一つ。「(コロナ禍で)知人と酒を飲みながら注目選手について話す機会さえない」と悲しむ。

 同じく聖火ランナーを務めた熊谷周平さん(32)=鹿島市=は、異例の大会にも「世界中の人々に勇気と感動を与え、未来に誇れる大会になってほしい」と期待を込める。

■ホストタウンも

 大会には佐賀県関係の14選手が出場する。佐賀市の大型商業施設で開催中の県ゆかりの選手のパネル展にも足を運んだ徳富美貴子さん(46)=同市=は、自宅のテレビで娘の千紗さん(9)ら3世代の家族7人で開会式に見入った。「新型コロナや大会関係者の問題もあったけど、始まったらやっぱり熱くなる」と興奮気味。

 県内はホストタウンとして3カ国の事前キャンプ地に選ばれ、唐津市は男子3人制バスケの強豪セルビアが滞在した。同市の3人制プロバスケットボールチーム「カラツレオブラックス」主将の原慎也さん(38)は練習にも参加し「選手同士仲が良く、楽しんでいた」と振り返る。「どの競技も日本がメダルをとれば人気が出てくる。競技人口も増え、もっと強くなる」とスポーツの裾野の広がりを期待する。

■医療体制に不安

 一方、コロナ禍の五輪開催へ複雑な思いを抱く医療関係者も。県内の病院に勤務する福田智子さん(56)=小城市=は、サッカー競技を楽しみにしながらも、関東の医療関係者が五輪会場に派遣される状況に「現場が立ちゆかなくなるのでは」と心配する。

 県内でも感染拡大が続いており緊張した日々が続く。県内病院のコロナ病棟で働く20代の女性看護師も「感染急増につながらなければいいが」と表情を曇らせる。

 半世紀を経て、東京に戻ってきた五輪。期待と不安が入り交じる中、スポーツの祭典が幕を開けた。(石黒孝、井手一希、中島幸毅、中村健人、中島野愛)

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