佐賀東高演劇部「太陽の羅針盤」の一場面=佐賀市の諸富文化体育館ハートフル

佐賀東高生向けのお披露目に伴い開かれたトークセッションで、大隈重信の人間性などについて山口祥義知事(左)と意見を交わす演劇部の青山美風部長(中央)、彌冨公成顧問=15日、佐賀市の諸富文化体育館ハートフル

 佐賀出身で総理大臣を2度務めた大隈重信の100回忌に合わせて佐賀東高演劇部(佐賀市)が手掛けた作品「太陽の羅針盤」が15日、佐賀市の諸富文化体育館ハートフルで上演された。劇中劇で登場する大隈や同時代の偉人たちと、彼らの心情に思いをはせる高校の演劇部員たち。出演者全員が1人2役で大隈の人間性や志のありかを探る、高校生が演じてこそ強く響く物語だ。

 物語は、劇中の「佐賀東高演劇部」が大隈の劇を演じることになり、稽古しながら登場人物の心情を掘り下げていく―というノンフィクションのような展開で進む。

 ストレートな歴史劇では史実として不確定な場面を描くのも難しい上、演劇としての完成度とは別の面で評価される怖さがある。かといって慎重になればエンターテインメントとして淡泊になりかねない。現代の高校演劇部の部室と過去を自在に行き来する設定にすることで、こうした課題と一定の距離を置き、物語に濃淡や躍動感が生まれた。

 ただ、高校演劇である以上は「教科書的要素」も無視しない。「大隈はなぜ日本に鉄道を走らせようと思ったのか」。劇中劇で大隈を演じる“ノブ”にアドリブと称して投げ掛けられる問いに、「日本の近代化のため」という「正解」を一度は示しておきながら、終盤の「今度は大隈重信の『心』をたどろう」というせりふを分岐点に、演劇部ならではの“自由回答”へ観客を導いていく。

 その先の、役者たちがフルパワーで表現する「人間・大隈」は涙なしには見られない。「大隈は佐賀に戻る江藤新平を引き留められず、結果、罪人として死なせた」という冷淡な史実の裏に、ひとりの人間がいることに私たちは、いまさらながらに思い至る。

 大隈と部員たちが心を通わせ、互いをつなぐ「佐賀」について話し始めると、演じる彼らが高校生であることに一層の意味が生まれる。大隈についてある程度知っているはずの、私たち佐賀の大人の固定観念を軽やかに飛び越え、100年以上前の賢人から直接、志を受け継いだ若者たち。多くの大人たちは緞帳(どんちょう)が下りる時、胸いっぱいの感動の中にほんの少し、嫉妬にも似た苦い感情が混じっていることに気づくだろう。(志垣直哉)

 

佐賀東高校演劇部   

「太陽の羅針盤」上演予定

 ■31日午後3時 唐津市文化体育館

 ※8月1日のアバンセホール(佐賀市)は満席になりました。

 予約は先着順で佐賀広告センター、電話0952(28)3888=平日午前10~午後5時、または住所・氏名・連絡先を明記し専用メールookuma0731karatsu@po.don3.comへ。

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