ろくろを回す土屋由起子さん。「90歳になっても、生きてる限り続けたい」と制作への思いがあふれる=唐津市浜玉町の由起子窯

黒唐津茶碗

グレーがかった新作「雨雲」(奥)と「緑釉」

自然豊かな作業場。秋には紅葉が彩る

「90歳になっても、生きてる限り続けたい」と制作への思いを話す土屋由起子さん=唐津市浜玉町の由起子窯

黒唐津の表現を模索し、20代の頃に作った黒唐津茶わん

細やかな文様と色味が美しい「黒唐津平皿」

すっきりとした色味が魅力的な斑唐津茶わん

作業場の前にも黒唐津のとっくりが並ぶ

 唐津市浜玉町東山田の工房「由起子窯」は、緑に囲まれて木陰が夏の日差しを和らげる。土屋由起子さん(50)は、料理を引き立ててシンプルでも存在感のある作品を生み出している。使う人を考えた器を目指し、日々作陶と向き合う。

 浜玉町出身。祖父と父が古唐津好きで、幼い頃から地元の骨董店に一緒に付いていった。高校卒業後は九州産業大造形短大で工芸デザインを学び、「唐津で仕事をしたい」と、身近に感じていた唐津焼の世界に飛び込んだ。「粘土は素材として優しい感じがして、自分には合っていると思った。失敗しても戻るから」と屈託なく笑う。

 当初は実家の玄関にろくろを置き、ほとんど独学で古唐津の再現に取り組んだ。「技術もなく、もやもやとしていた。自己流だったけど、ごまかしてるみたいで。基礎がないのはコンプレックスだった」と振り返る。

 窯元への見学に訪れたのがきっかけで、1998年から中里隆氏(隆太窯)に弟子入りした。食を大切にする中里氏から最初に教わったのは、包丁研ぎや魚のさばき方だったという。3年間基礎を学び、30歳で独立した。

 神秘的な黒、濃緑が入り交じった渋み、時折星くずのようにきらめく線。土屋さんの作品群で、特に人気が高いのは黒唐津だ。出合いは窯跡巡りをしていた20代の頃。「言葉にうまくできないけど、すごくひかれた色だった。一辺倒の黒じゃなくて質感や色味も幅広い」と魅力を語る。

 黒唐津の表現を追求し、何度も実験を繰り返す日々。釉薬の調合や焼き方などを試し続け、黒唐津の釉薬づくりには3年間をかけた。「たどり着くまでが長かった。ただ失敗は苦にならない。失敗することが成功につながる」と実感する。

 取り扱いやすく、「生活の中になじむ器」を大事にしている。「唐津焼は焼き締めが甘く、かびやすい」との声を聞いたのがきっかけで、1300度以上でしっかりと焼き締め、表現との両立も図ってきた。「その食器があって良かったと思えるようなものを作りたい。いい食卓の時間を過ごしてもらえればと思う」

 唐津焼に対する愛情が、作り続ける何よりのモチベーションになっている。「同じものはできないし、飽きない。作るのが好き。90歳になっても、生きてる限り続けたい」と制作への思いがあふれている。(横田千晶)

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