佐賀女子高ソフトボール部を率いた久保田昭さん(2017年死去)に叱られた思い出がある。駆け出しの記者だったころ、もう30年ほど前になる◆県高校総体で連覇を続ける常勝チームだったが、その年、優勝を逃した。ちょうどグラウンドが工事中で、練習が従来通りにできなかった。大会を振り返る記事でその点に触れて敗因の一つのように書いたら、厳しい指摘を受けた◆「確かに、練習環境はそれまでとは違った。でも、生徒は懸命に練習してきたし、グラウンドが使えない不満など口にしなかった。勝手に言い訳にされては、頑張って優勝した相手チームにも失礼だ」と。ぐうの音も出なかった◆東京五輪はあす21日から、ソフトボールが先行して始まる。日本チームを引っ張るのは佐賀女子高出身の藤田倭(やまと)選手。久保田さんにみっちりと叱られ、それ以上に励まされてトップレベルに育った選手である。大谷翔平選手と同様に、投打の“二刀流”としても注目される◆〈感謝の心と謙虚な気持ちを忘れない〉。久保田さんの功績をたたえて設置された記念碑には、いつも口にしていた言葉が刻まれている。佐賀県ゆかりの14人が出場する東京五輪。恩師の言葉を胸に、藤田選手が先陣を切って世界の舞台に立つ。同じ人に叱られた縁もある。佐賀から精いっぱいのエールを送りたい。(知)

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