フラスコに入ったさまざまな株のノリの種子(フリー糸状体)。スサビノリは遺伝的に類似していることが分かった=佐賀大提供

永野幸生准教授

木村圭准教授

 佐賀大総合分析実験センターの永野幸生准教授(55)=ゲノム科学=や農学部の木村圭准教授(40)=藻類学=らの研究グループが、有明海を中心にさまざまなノリのゲノム(全遺伝情報)解析を実施し、国内で養殖が盛んなスサビノリは多様な品種間でも遺伝的にとても類似していると明らかにした。これらを用いて品種開発を進めても、画期的な新品種を生み出すことは望めず、今後は戦略の転換が迫られるとしている。

 有明海の養殖19株と養殖場周辺から採取した野生8株、宮城県や広島県など国内の養殖11株、中国の1株の計39株を調べた。ノリの種類は、国内分はスサビノリが34株、ほかはオニアマノリや絶滅危惧種のアサクサノリなどで、中国はタンシサイ。古いものは1975年に採取した佐賀1号も含まれている。

 解析の結果、スサビノリは野生株を含めても、かなり似通っていることが分かった。中国の大学が公開している山東省のスサビノリ(野生株)の個体間のデータと比べても、日本の株の個体間の違いは極めて小さかった。

 木村准教授は「長い養殖の歴史の中でアサクサノリが駆逐されたように、実際にはそこにいた野生のスサビノリも駆逐されている可能性がある」として、良品を選んでいく従来の選抜育種は「限界を迎えている」と語る。

 この結果は現場感覚と重なる。県有明水産振興センターでは、選抜育種は効率が悪く、以前ほど実施していないという。5年ほど前から育種よりも養殖管理に重点を置き、おいしいノリづくりを追求している。

 ただ地球温暖化に伴う海水温の上昇で、養殖期間が短縮化し、収量減の懸念があることから、高温耐性や病気に強い品種が求められている。木村准教授は「昔から日本にある野生のスサビノリをどこかから探して交雑したり、違うノリと組み合わせたりすることが必要」と交雑に活路を見いだす。

 一方、永野准教授は「放射線を当てるなど突然変異を起こす技術を取り入れたい」と別の道を探る。スサビノリの栽培化は、1960年代後半に千葉県で迅速に大きく成長する株が発見され、飛躍を遂げたことに触れ「どの遺伝子が変化して大きく成長するようになったのか、分かっていない。それを特定して、同様の変異を起こすことを考えたい」と話す。

 6月に論文が米科学誌「PLOS ONE」に掲載された。研究は、地域の農業や水産業の課題解決・発展を図るため、2017年度から佐賀大が取り組む「地域の農水圏生物生産・利用技術等の高度化プロジェクト」の一つで、日本一のノリ生産県にある大学として研究体制を整えてきた。(宮﨑勝)

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