長崎街道に面して往時の雰囲気を伝える旧枝梅酒造の店舗兼母屋=佐賀市

九州有数の規模を誇る願正寺の本堂=佐賀市

 文化審議会は16日、江戸時代・元禄年間に建てられた寺院「願正寺(がんしょうじ)」(佐賀市)と、長崎街道に面した造り酒屋「旧枝梅酒造」(同)の建物を、登録有形文化財にするよう萩生田光一文部科学相に答申した。本年度中に告示されるが、これで佐賀県内の登録(建造物)は48カ所、124件になる。

 願正寺の登録対象は、本堂、貴賓室、大広間、大玄関、鐘楼、山門の6件。現存する本堂は1702(元禄15)年に建てられ、1765(明和2)年に改修された。入母屋造り本瓦葺き建築面積805平方メートルで、九州有数の規模と歴史を持つ。

 18世紀前半に造られた貴賓室は佐賀藩主の「御成間(おなりのま)」で、簡素ながら上質な造り。大広間や大玄関は、無柱の構造などを用いて大空間を確保している。

 佐賀城下に時を告げる「時鐘」の役割を果たした鐘楼は、1768(明和5)年の建造。山門(大正前期)は透かし彫りを随所に施すなど、浄土真宗寺院らしい華やかな装飾を見せる。

 願正寺は鍋島家とゆかりが深く、関ケ原の戦いに絡んで建立された。幕末は志士たちが集い、明治には初めての県議会が開かれるなど、佐賀の歴史の舞台となってきた。第14代住職の熊谷信隆(しんりゅう)さんは「多くの方に守られてきた。熊本地震による傷みで本堂の耐震補強が必要になったが、今のままの姿で残したい」と語る。

 また、江戸末期に建てられた「旧枝梅酒造」は店舗兼母屋が登録された。旧長崎街道に面した造り酒屋の町家で、2階建て瓦葺き。建築面積は200平方メートル。平入り構造で、背後に棟を伸ばしてコの字形の屋根とする、佐賀特有の「くど造り」を伝えている。

 2018(平成30)年に改修され、現在は居酒屋やギャラリーとして使用している。佐賀市が所有し、運営を担う企業とっぺんの武廣正純会長は「長崎街道の建物が往時のままに残っているのは大きな魅力。地域の人が入りやすい場として少しずつ根付いてきた」と話す。

 今回の答申では、新たに35都道府県の220件が選ばれた。国後島と根室をつなぐ海底ケーブルの陸揚げ施設の遺構「根室国後間海底電信線陸揚施設」(北海道根室市)や、戦前最大規模の庁舎でモダンな様式が特徴の「大阪府庁舎本館」(大阪市)などが含まれている。(古賀史生)

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