有田内山の景観

 有田の観光スポットの柱の一つに、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された内山の町並みがある。歴史的な集落や町並みを、まずは全国の市町村が保存地区を決定し、その中でも特に価値が高いものを国が選定する制度である。

 現在、43都道府県、101市町村の123地区が選定されており、佐賀県内には、平成17(2005)年選定の嬉野市の1地区と翌18(06)年選定の鹿島市の2地区なども所在するが、飛び抜けて早いのが平成3(1991)年選定の有田内山で、今年でちょうど30年の節目の年を迎えている。

 伝統的建造物群保存地区は、面としての町並みの価値に重点が置かれ、個別の重要文化財の建造物とは違い、外から見えない建物内部にまでは規制は及ばない。しかし、景観維持のため地区内やその周辺地域では、外観の修理には一定の制約があり、修理の際の助成や税制上の優遇措置があるとはいえ、地域住民の深い理解がないと維持が困難な制度でもある。

 有田内山の選定に向け取り組みはじめた頃は、まだ右肩上がりのバブル絶頂期。地方では一様に没個性の小さな都会が目指され、開発優先で、それを阻害する文化財保護は諸悪の類いとの空気感すらあった。その中、保存を推し進めた当時の町民のけい眼には今さらながら驚かされるが、これにより30年の時を経ても、選定以前にも増して良好な景観が保たれ、観光資源や町民のアイデンティティの醸成の上でもひと役買っている。

(有田町歴史民俗資料館長・村上伸之)

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