子宮頸がん予防ワクチンの接種対象者に送付されているリーフレット

 子宮頸(けい)がんを予防する「HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン」の接種を受ける人が佐賀県内で増えている。各市町が昨年秋に厚生労働省の要請を受け、定期接種の対象者にワクチンの情報を周知するようになったことが背景にある。副反応への懸念から積極的な勧奨が中止されて8年になるが、リスクとメリットを調べて接種を選択する人が増えているとみられ、国の対応の明確化を求める声もある。

 ワクチンの定期接種は2013年4月に始まり、小学6年から高校1年相当の女子が3回の接種を無料で受けられるようになった。しかし、全身の痛みなど副反応を訴える声が相次ぎ、厚生労働省は同年6月、接種を積極的に勧めることを中止した。現在も定期接種の位置付けは変わらないが、一時約70%あった接種率は1%未満まで低下した。

 厚労省が自治体に周知の要請をしたのは20年10月。「定期接種としてのHPVワクチンの存在を知らない人が増えている」として、有効性や安全性に関する情報を対象者に個別に提供するよう通知した。そのためのリーフレットも作った。

 県内の市町は通知を受け、対象者に接種のお知らせを送っている。県健康増進課によると、県内の定期接種での月ごとの接種回数は、通知以前は1桁や2桁で推移していたが、通知後は急増し、21年3月は398回になった。厚労省の担当者は「全国で同様の傾向が出ており、周知の影響があると考えている」と話す。

 接種を勧める立場の県産婦人科医会の内山倫子理事は「周知によって接種者が増えたということは、過去に周知不足のために接種機会を逃した人がいたことを表している」と指摘する。その上で「公費で打てる定期接種でありながら、積極的な呼び掛けはしないという厚労省のあいまいな姿勢が招いたことであり、改めてほしい」と話す。

 今回の通知について厚労省は「あくまでも周知を図ることが目的」とし、接種を積極的には勧めないという姿勢は変えていない。

 子どもに接種を受けさせた伊万里市の女性(40)は「長女が中学2年の時、知人に教えられて定期接種の対象と知り、自分でメリットとリスクを調べて受ける選択をした」と話す。

 一方で「周知をしつつ『勧めてはいない』と言われると、結局どうすればいいのか保護者は迷うと思う」と話し、国の対応の明確化を求めた。(青木宏文)

 

 ■HPVワクチン 子宮の入り口付近にできる子宮頸がんの主な原因であるHPVの感染を予防するワクチン。厚生労働省によると、子宮頸がんは国内で毎年約1万1千人が発症し、約2800人が死亡している。世界保健機関(WHO)は接種率を15歳以下の女子の90%まで高めることを目標にしている。佐賀県によると、副反応の疑いで県に寄せられた相談件数は、窓口を設置した2015年から6年間で8件あった。

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