豊田が今季のベストゴールに挙げた千葉戦でのヘディングシュート。昇格を争うライバルを蹴落とし、チームを勢いづける決勝点となった=10月26日、ベストアメニティスタジアム

 クラブ発足15年目で初のJ1昇格を果たした尹晶煥(ユン・ジョンファン)監督率いるサガン鳥栖。チームの躍進はFW豊田陽平(26)抜きには語れない。ゴール前で持ち前の高さと強さを発揮し、チーム総得点「68」の3分の1にあたる23ゴールを挙げ、クラブ初の得点王に輝いた。佐賀新聞社がガージュ(高山質店)の協力で行った「年間MVP」投票でも、200票のうち約半数の支持を集めた。シーズンを終えた豊田が今季を振り返るとともに、来季への思いを語った。(聞き手・古川浩司)

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 ■J1昇格を成し遂げた今の気持ちを。

 間違いなく偉業。そのメンバーとして名前を刻めたことは、素直にうれしい。たった2年間しか在籍していないが、J1昇格への期待や、みなさんの気持ちの重みをすごく感じ取れた。

 ■昇格できると実感したときは。

 僕自身がいけると思ったのは徳島戦(11月27日)。チームとしていい方向になったのは、竹原社長が就任されてからだと思う。僕たちに活力を与えてくれた。フロントが変わり、選手たちも「やらなくちゃいけない」と感じた。

 ■前半戦は7位。自身も左足首のけががあって6ゴールだった。

 シーズン前からコンディションが良かっただけに、前半戦はふがいなかった。昇格という一番いい結果は出たけれど、個人的には(後半戦の活躍も)「チャラになった」「帳消しにできた」という気持ちしかない。

 ■後半戦は19試合で17ゴール。何が変わった。

 いつも考えるけれど、何か変えたところは本当になくて…。やはりチームメートの力。しっかりパスを出してくれて、最後に託してもらった。強いて言えば、子どもが生まれたり、サッカー以外のところが変わった。

 ■08年の山形での昇格経験は生きたか。

 山形の時は、昇格経験のある(監督の)小林伸二さんが、フロントと協力して、選手にプレッシャーがかからないようにしてくれた。それを経験していたから、今回は緊張することなくリラックスしてゲームに入れた。そういう意味では、プレーで引っ張ることができたかもしれない。うちは若い選手もいる。後で「緊張しないと言っていたけれど、実は緊張していた。眠れていなかった」というコメントも目にした。経験のある選手がもう少し引っ張って行けたら、もっと早く昇格が決まっていたのかもしれないけれど。

 ■23ゴールで堂々の得点王。

 僕一人でとれたものではない。チームメートや自分を信じて使い続けてくれた尹さん、日ごろ練習をサポートしてくれるコーチングスタッフなど、関わった全ての人に感謝したい。あと、何より大きいのは家族。妻が良いときも悪いときも、常に変わらず接してくれた。料理も含め、いつもそばで支えてくれた。一番喜んでもらいたい人だし、得点王をささげたい。

 ■今シーズンのベストゴールを選ぶと。

 振り返ってみるといくつかいいゴールはあった。その中で、試合状況や雰囲気などをトータルで考えると、ホームの千葉戦での決勝ゴール。チームが必要としている場面だった。

 ■今季のチームは。

 まずハードワークができた。尹さんの厳しいトレーニングに対してまじめに取り組み、みんながしっかり自分の力に変えた。仲の良さや絆の深さがあったからこそ、互いを助け、支え合えた。みんなで勝ち取った昇格。誰かだけが頑張って取れたという訳ではない。

 ■チームが一つにまとまることができた。

 新しく入ってきた選手の人柄も良かった。竹原社長が食事会を開き、尹さんも決起集会を企画してくれた。こんなにみんなで食事したことはなかった。どうしても家族や、仲の良い2、3人だけで集まりがちになってしまう。チームで何かをするという機会が多いと、自然にコミュニケーションも取れる。うまく尹さんたちがコントロールしてくれたのかな。

 ■尹監督について。

 1年目はぶつかる部分もあったけれど、それでお互いに理解し合えた。ぶつかってよかったと思う。今季は選手のコンディションを見ながらトレーニングを考えてくれた。

 ■来季はいよいよJ1。名古屋、京都時代にJ1を経験している。

 J1のクラブと比べると、足りない部分がほとんど。それを踏まえて、練習や日々の生活をいかに送っていくかが大事。サッカーは能力が下だから勝てないという訳ではない。今年の自分たちの戦いをしっかり見せて、もっと意識を高めて積み重ねていければ、十分やっていけると思う。

 ■来季の去就が注目されている。

 今はバタバタしているので、もう少し時間がたたないと。この時期は心が不安定になる。行事などが終わって、リラックスした状態でしっかり家族と向き合って考えたい。
 2年間試合に出させてもらった。特に今年の終盤、ホームのあの素晴らしいスタジアムで、満員に近い状況の中、プレーできたことは誇り。来年のことはまだ分からないけれど、間違いなく僕のサッカー人生の中で一つの大きな分岐点になろうとしている。鳥栖や佐賀だけでなく、サガン鳥栖を応援しているすべての人たちに感謝している。

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 ▽1985年4月11日生まれ。星稜高校から2004年、J1名古屋に入団。08年の北京五輪日本代表。同年、期限付き移籍中の山形で11ゴールを挙げ、J1昇格に貢献した。10年にJ1京都から期限付き移籍で鳥栖に加入し、13ゴール。今季は23ゴールで得点王に輝いた。185センチ、79キロ。石川県出身。

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