東京五輪・パラリンピックのトライアスロン会場で設置作業が進む海水の循環装置。写真右側の円形にプロペラがある=東京都のお台場海浜公園(海洋開発技術研究所提供)

海洋開発技術研究所の「アクアファイン」10分の1模型と田村秀行社長=伊万里市瀬戸町の同社

 東京五輪・パラリンピックのトライアスロンなどの競技会場に、伊万里市の企業「海洋開発技術研究所」が製造した海水の循環装置が設置される。普段はダム湖のアオコ対策に使われている装置が、競技運営の課題になっていたスイムコースの水質改善と水温調整に一役買うことになった。

 同社は造船業のプロペラの技術を他分野に応用する研究開発をしている。五輪で使用する「アクアファイン」は、水面に浮かべたプロペラで表層の水をダクトを通して底層まで送り、大きな水の流れを起こす。元々は約20年前にダムやため池のアオコ対策のために開発され、現在は武雄市の矢筈(やはず)ダムなど全国30カ所以上に設置されている。

 オリパラのトライアスロンとマラソンスイミングの会場になるお台場海浜公園は、東京湾の奥に位置して汚水が流入しやすいとされ、水質の改善が課題となっていた。2019年8月のテスト大会では、大腸菌の数値が国際トライアスロン連合(ITU)の基準を超えて競技が一部中止になったり、選手が「トイレのような臭い」と指摘したりして問題が広く知られるようになった。

 大会組織委員会と東京都は、競技水域の外周に水中スクリーンを三重に設け、汚水の流入を防ぐことにした。だが、それによって域内の水の流れが滞り、水温が上昇するリスクが生じた。ITUの規定では、水温が32度以上になるとスイムは中止になり、競技会場での過去の調査で32度に達した日があったという。

 そこで、「アクアファイン」に白羽の矢が立った。水温が高い表層と低い低層の海水を混ぜ、水温を下げる効果を狙う。現在、会場では「五輪仕様」に改造した3台の設置作業が進んでいる。

 同社によると、オリパラへの装置導入は19年末ごろには内定していたが、新型コロナウイルスの流行による大会の1年延期を経て、6月上旬に正式契約をした。田村秀行社長(51)は「五輪開催にとりあえずほっとしている。わが社の装置が力を発揮し、競技が無事に行われることを願っています」と話す。五輪のトライアスロンは7月26~31日で、マラソンスイミングは8月4、5日。パラリンピックのトライアスロンは8月28、29日に実施される。(青木宏文)

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