クワガタの大あご、カニのはさみ、万年筆のペン先…。上空から見える「く」の字が向き合ったような面白い姿が、さまざまな表現を呼ぶ佐賀県杵島郡白石町にある新有明漁港。町のノリ漁家が船を係留する浮桟橋がある。
 佐賀と長崎を結ぶ国道444号の有明干拓入口交差点を南進。干拓によって生まれた広々とした農地やゴルフ場を横目に3キロほど行くと堤防が姿を現し、浮桟橋はその先に広がる有明海に伸びている。

【写真を拡大】 有明海にシンメトリーに突き出た新有明漁港。内側の浮桟橋に漁船などが停泊している=杵島郡白石町新明(撮影・鶴澤弘樹)


 開港は2010年。干拓地の地先にあった二つの小さな桟橋が老朽化したため、02年から総事業費58億3732万円をかけて整備された。全長347メートル。地先からの30メートルの道路、船を係留する230メートルの浮桟橋、桟橋から狭まりながら海に突き出す87メートルの防波堤で構成される。くの字になっているのはこの防波堤部分だ。只江川の水を海に導く導流堤の役目も果たす。町の担当者は「230メートルにも及ぶ浮桟橋は全国的にも珍しいのでは」という。
 「この浮桟橋のおかげで船の管理も荷降ろし作業も随分楽になった。長年の苦労が報われた」。小学生から父を手伝い、この地で60年近くノリ養殖を続けている佐賀県有明海漁協新有明支所運営委員長の岩永強さん(67)は振り返る。
 前の桟橋は90メートルほどしかなかった。ノリ漁では親船と子船の二つの船を使う。養殖場には親船で向かい、ノリが育つ網を張った現場では箱形の小さな子船に乗り換えて作業する。漁港に戻っても短い桟橋では子船しか係留できず、親船は沖合に5~10本の竹を束ねて突き刺した支柱につなぎとめていた。
 「台風にはもちろん耐えられないから、別の場所に避難していた。予期できない強風に親船が流され、消波ブロックに激突して大破した船は何隻もある」と岩永さん。今は親子並んで係留できる。184隻分もある。
 漁港からは雲仙・普賢岳や熊本の離島・湯島、福岡県大牟田市と、広大なパノラマが展開する。ハゼやスズキ(シーバス)を狙う釣り人の姿もある。初日の出の人気スポットでもある。入り口には有明海の愛嬌あいきょう者ムツゴロウの保護区もあり、雌の関心を引くために雄が跳びはねる求愛ジャンプを狙うカメラマンも多い。
 (文・小野靖久、写真・鶴沢弘樹=佐賀新聞社)
 ※次回は7月13日の掲載です。

 

■グルメ観光スポット 道の駅しろいし=杵島郡白石町福富下分​=

道の駅しろいし

 

 新有明漁港から北東に約5キロ、車で10分余りの場所にある道の駅「しろいし」。米やタマネギ、レンコン、アスパラガス、トマト、イチゴなど豊富な農作物で知られる白石町の物産が並ぶ。

 2年前にできた鉄骨2階建ての〝駅〟の1階には物産販売スペースとうどんやソフトクリームなどの軽食コーナー、2階には展望テラスのある食堂がある。

地図

 300を超える契約農家が持ち込む朝採り野菜は鮮度抜群。今の時期は鮮度と甘さが比例するスイートコーンを求めて早朝から列ができる。タマネギスナックやせんべい、乾燥レンコンのパウダーや輪切りなどのご当地食品も並んでいる。
 2階の食堂にはレンコンのみじん切りが入ったハンバーグや町産トマトを使ったパスタ、1階のうどんのトッピングにはタマネギのかき揚げ、レンコンスライス、有明海苔のりと、白石が味わえるメニューが並ぶ。

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