「田澤義鋪」の漫画製作に向けて開かれた製作・活用検討委員会の第1回会合の様子=鹿島市の生涯学習センター・エイブル

田澤義鋪

 「青年団の父」と呼ばれる社会運動家、田澤義鋪(1885~1944年)の生涯をたどる子ども向け漫画の出版を、出身地の鹿島市が進めている。新たに見つかった田澤の日記など最新の研究成果を踏まえて、漫画の原作とする一般向けの書籍から書き起こす。今秋にも書籍を出版した上で、年度内に漫画を完成させる計画で、鹿島市内の小中高校のふるさと学習などに活用する。

 田澤は、大正から昭和期の青年団運動の指導者として生涯学習の普及に努めたほか、女子教育を通じた女性の地位向上や、現在の「明るい選挙推進運動」につながる公正な選挙を目指す運動を展開した。渋沢栄一らとともに「労使協調」運動にも取り組み、スイスのジュネーブで開かれた国際労働会議には労働者の代表として参加している。貴族院議員や、東京市助役も務めた。

 太平洋戦争さなかの1944(昭和19)年3月に講演先で倒れるが、「この戦争は負ける」と断言し、敗戦後を見据えるよう覚悟を促した。その生涯は田澤とともに青年団運動に取り組んだ作家下村湖人=神埼市千代田町出身=が、田澤の伝記「この人を見よ」にまとめている。

 田澤を巡っては近年、佐賀県立図書館が所有していた日記が公開され、青年団運動にとどまらない活動が明らかになってきた。

 田澤研究家の河島真神戸女学院大文学部教授は、19日に発足した「マンガ製作・活用検討委員会」にオンラインで出席し「戦争へと向かう流れにあらがう形で、近代的な国家を構想し、旗振り役を務めた」と評価した。日記を活字化した鹿島市民図書館の高橋研一学芸員も「田澤の理想はいずれも、戦後になって実現した」と先見性を指摘した。

 今回の漫画化は、公益財団法人ブルーシー・アンド・グリーンランド財団(東京)の助成を受け、2千部を出版する予定。原作は河島教授と高橋学芸員が共同で執筆する。鹿島市出身の漫画家やまのたかし氏が作画し、学研の学習漫画なども手掛ける藤井社会科デザイン事務所(東京)から出版する。

 計画では出版後、小学5年、中学2年、高校2年を対象に、田澤を学ぶ出前授業を行う。さらに、田澤ゆかりの地を訪ねるウオーキングイベントや、記念講演会なども予定している。(古賀史生)

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