全国で本格化し始めた新型コロナウイルスワクチンの職場接種。佐賀県内で実施を予定しているのは、全国に事業所を展開する大企業がほとんどで、中小が多い地場企業では動きが乏しい。背景には打ち手となる専属の産業医の不在や、自治体による住民接種が全国の中でも進んでいる事情などがあるようだ。

 県内のある企業は実施を検討したが、最終的には見送った。「産業医は開業医で、会社に来るのは月に1、2回。自治体による接種もある中、接種要員の確保は難しい」と明かす。

 接種には医師の問診が必要で、職場接種では産業医の活用を念頭に置く企業が多い。ただ専属の産業医選任が義務付けられるのは一つの職場で1千人以上(有害物を扱う場合は500人以上)が働く場合となる。

 2016年度の経済センサスによると、県内の法人企業は約1万6千社。佐賀労働局によると、県内で常に1千人以上が働く職場を抱えるのは6社、500人以上でも25社で、専属の産業医を選任する企業は多くはない。

 さらに、政府は職場接種の目安として、一会場で最低1千人程度(2千回)を示している。全国で接種の協力方針を発表していたアイリスオーヤマ(仙台市)は、鳥栖工場でも接種準備を進めたが、目安を満たさなかったため21日の開始を見送った。同社は「現時点では未定だが、諦めたわけではなく調整中」とする。

 加えて、県内自治体による接種の進展も要因としてある。佐賀県は65歳以上の高齢者の接種率が62・10%(20日現在)と全国最高。高齢者以外への接種の見通しも立っており、佐賀市の場合、接種券を50~64歳は25日から、19~49歳を7月2日から発送することを決めている。

 佐賀市の中堅メーカーは、県内の接種状況を踏まえ「今は企業がやらなくてもいいと思っている。状況が変わったら、また方針を協議したい」とする。

 “ワクチン差別”への懸念も実施をためらわせる。この中堅メーカーは「接種する人とやむを得ない事情などで希望しない人とが、職場接種だと分かりやすい。差別や偏見につながらないか心配」と話した。(大橋諒、中島佑子)

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