港町に広がる商家の町並み=唐津市呼子町(港町呼子まちなみ保存協議会提供)

 唐津市呼子町に残る歴史的な町並みの保存へ向けた動きが本格化する。地元住民の要望を受け、唐津市は6月補正予算案に保存対策調査費を組み、国の重要伝統的建造物群保存地区(伝建地区)選定を目指している。選定には住民の合意が欠かせず、理解を得るため丁寧な住民説明が重要となる。一方で保存対策調査には2年を要する。市民団体がまとめた最新のリストで対象地区の家屋がこの十数年で50件、解体されており、空き家が増えている中では時間的な猶予は十分にはない。

 呼子湾の東側に連なる町並みは、中世から昭和への時代の変遷が分かる街路など町割が残っていて珍しく、江戸時代の建物も少なくない。湾から山側の狭い範囲に多様な町家が建ち、朝市通りも含まれている。捕鯨文化を伝える佐賀県重要文化財の「鯨組主中尾家屋敷」や、国の登録有形文化財「永井家住宅」といった、既に保存対象になった建物もある。

 唐津市との合併前から、呼子町では文化連盟やまちづくり団体を主体に、保存へ向けた活動が続けられてきた。県と唐津市の助成を受け2007年から2年間、宮本雅明九州大教授と三島伸雄佐賀大准教授に依頼して調べた町並みの調査報告書を作った。ただ、伝統的価値の高さや一体的な保存の可能性が指摘されたものの、地域全体の機運にまでは至らなかった。

 保存活動は中心的な個々の建物だけでなく、町並み全体として残すことで新たな観光資源としての活用につなげていく狙いがある。その手段の一つとして、必要な保存修復への補助や優遇措置が受けられる伝建地区選定がある。

 今回、唐津市が予算化した背景には、2019年に住民が求めた文化庁調査官による現地確認で、選定へ向けた調査の対象になり得るとの見解を得たことが大きい。市は昨年8月に対象地区の住民説明会を開き、「大きな反対はなかった」として準備を進めている。

 市民団体「港町呼子まちなみ保存協議会」は、建築士らでつくるNPO法人からつヘリテージ機構の協力を得て、19、20年度に、先の調査報告書を基に改めて物件を再調査し、景観を構成する石垣や水路なども写真に収め、家屋203件を含む計759件をリスト化した。市が行う保存対策調査の資料として活用が期待される。

 呼子町の人口は、1955(昭和30)年の1万人から現在4100人余りに落ち込んでいる。保存協議会は、注目されてこなかった地域の価値を明らかにして生かすことが、住民生活を下支えし、地域の魅力づくりにつながると指摘する。長年にわたる住民の熱意に応え、行政も早期の伝建地区選定の実現へ向け連携を進め、地域住民の理解を得る活動を加速したい。(辻村圭介)

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