山県亮太選手による日本新記録を樹立を「山県」と表記して伝える佐賀新聞ほか各紙と、新聞表記の原則を示した共同通信社「記者ハンドブック」

 陸上男子100メートルの山県亮太選手が日本記録を塗り替えたことを報じた7日、佐賀新聞「こちら さがS編集局」(こちさが)に「人名なのに正式な『縣』ではなく『県』と表記するのはなぜ?」という質問が寄せられた。確かに山県選手の正式な表記は異体字(旧字体)の「山縣」。一定の基準に沿った表記だが、本人のアイデンティティーを示す名前と新聞表記の違いに、違和感を覚える人も増えているようだ。

 佐賀新聞は7日、山県選手について「山県9秒95 日本新」の大見出しで12面のトップで伝えた。朝刊各紙を調べてみると朝日、読売、毎日、日経、産経、西日本のいずれもこのニュースを取り上げ、記事や見出しは「山県」と表記、「山縣」ではなかった。

 

▽多くの人に

 漢字には、社会生活で使う際の目安として内閣が告示する「常用漢字」があり、その中には同じ字でも形が異なる異体字がある。常用漢字は義務教育でおおむね習うことから、多くの人に読んでもらう新聞では表記の原則になっている。

 ただ、人名や自治体名については例外もある。共同通信の基準では(1)原則の字体とは大きく違う異体字のうち、使い分けを決めた16字種17字体(渕=淵、龍=竜、嶌・嶋=島など。下が原則)(2)本人の希望などから著名な特定の人物に限り異体字を使うことを決めた例(指揮者の小澤征爾さんなど)(3)それ以外に本人、家族から強い希望があった場合―としている。

 山県選手のケースでは、「縣」は(1)の17字体に該当せず、選手本人の希望もないことから、原則通り「山県」と表記している。

 

▽時代の流れ考慮

 漢字表記は佐賀新聞でもこの原則に準じているが、県関係者の名前については本人の意向も確認しながら異体字を使うケースも多い。記事だけでなく「ひびの情報面」の「おくやみ」などがある。共同通信から配信された記事でも、叙勲・褒章の名簿やプロスポーツで活躍する選手名など、県関係分は要望があれば戸籍通りの漢字に改めている。これ以外でも、例えば「佐賀大附属小」は、新聞表記の原則になっている「付属」を使わないなど、一般的な使われ方も意識しながら対応しているケースもある。

 原則はあるものの、人名では漢字表記の例外を適用するケースは増えている。自らの考えを発信できるSNSなどの情報ツールが誰でも使えるようになり、より「個人」が尊重されるようになった時代背景もあるとみられる。

 特に思いが込められた「名前」をどう表記していくのか―。世の中の流れを追いつつ、誰でも読める表記という最重要課題をどう両立させていくのかは、新聞メディアに突きつけられている大きな課題になっている。(志垣直哉)

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