今年は、早々と5月半ばには梅雨入りしたが、序盤の6月上旬までは晴れた日も多く、何だか得した気分である。ただ、長期予報では、6月は平年に比べ曇りや雨が多く、7月前半も平年並みの予想。くれぐれも災害には気をつけたい。
 季節柄、何か梅雨や雨にまつわる陶片はないかと思いを巡らしてみたが、なかなか思い当たるものがない。この時期の花と言えば、あじさい、花しょうぶ、スイレン。動物ではアマガエル、カタツムリ、蛍など、どれも有田焼には縁遠い。
 実在の動植物がだめなら、次は空想上のいきもの。ようやく1匹だか1頭だか知らないが、一つの図柄に行き着いた。「雨龍」である。「あめりゅう」「あまりょう」「うりゅう」などさまざまな読み方があるが、特にどれが正しいということでもないらしい。
 実は龍にも階級があり、「龍」「蛟(みずち)」「應(おう)・蜃(しん)」「蚪(と)」「璃(ち)・蟠(ばん)」の5段階に分かれるという。その中で最下の璃龍が雨龍のことで、角がなく、尾が細く、雨をつかさどる弱い精霊で、龍の幼い姿だともいう。皇帝の力の象徴としてもっぱら龍が好まれた中国とは異なり、等しく森羅万象に畏敬の念を抱いてきた日本では、愛嬌(あいきょう)のある姿の雨龍も好んで用いられた。有田焼では、よく見かけるほどの図柄ではないが、ほとんど見ないというものでもない。
 コロナ禍もあり、体調管理の難しい日々だが、ぜひ健康に留意して梅雨を乗り切っていただきたい。
(有田町歴史民俗資料館長・村上伸之)

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