教室の様子を映し出すタブレット端末(手前右)。内蔵のカメラで撮影し、自宅待機の児童生徒に授業の様子が動画で送られる

 新型コロナウイルスに家族が感染し、濃厚接触者となった児童生徒が自宅待機を余儀なくされ、佐賀県の教育現場が対応に苦心している。文部科学省は学びに遅れが出ないように対象の児童生徒へのオンライン授業を勧めているが、ICT教育への対応は市町で差が生じている。

 新型コロナが猛威を振るっていた今年初め、県西部の小学校の教室後方にカメラを備えたタブレット端末がそっと置かれた。家族が感染し、自宅待機となった児童に授業の動画を送るためだったが、その児童の家族の希望もあり、級友に何も告げずに始めた。「子どもたちは最初、動画を撮るのを不思議がっていて、いかに自然にするかが難しかった」と担任教諭。自宅待機の児童には学校の端末を貸し出して対応した。

 ■2週間の空白

 別の学年で自宅待機が出た時は、周囲に事情を説明し、級友たちがその児童と画面越しに話すこともあった。担任教諭は「低学年での対応は難しく、オンライン授業を1、2時間に絞った。放課後もオンラインで個別に対応した」と明かす。

 文科省のマニュアルによると、濃厚接触者となった児童生徒は出席停止になる。期間は感染者と最後に濃厚接触した日の翌日から2週間。「一つの単元が終わり、放課後の指導だけでは遅れを取り戻しにくい」「子どもが学校に来にくくなる」。教師たちは2週間の空白の大きさをこう語る。

 ICT教育先進地の武雄市は6、7年前から、児童生徒1人1台のタブレット端末貸与を続けている。昨年、通信環境がない家庭に貸与するWi-Fi(ワイファイ)ルーターを購入してオンライン授業の環境を整えており、教室全体や黒板など複数の映像を自宅待機の児童生徒に届けた。

 德永貞康教育監は「子どもの状況が確認できて安心につながった。自然に子どもが学校に帰ってこられた」と成果を語る。市の単独予算で全校に配置したICT支援員の存在も大きかったという。

 ただ、県教委などによると、こうした対応ができたのは一部で、多くの市町の小中学校はプリントを配って対応している。児童生徒に1人1台の端末を配布する国の「GIGAスクール構想」がオンライン授業推進の背景にあり、機器が入っても多くの市町はその導入に向けた準備のさなかにあるというのが実情だ。

 ■高校はほぼ実施

 県立高校では2014年度から1人1台の端末が導入されており、その威力を発揮している。生徒や家族の意思を確認しながらオンライン授業を実施しており、県教委プロジェクトE推進室は「生徒の自宅や療養しているホテルをつなぎ、ほとんどの学校が取り組んだ」と話す。県教委は昨年度、コロナ対策の地方創生臨時交付金を使い、各校に1学年1台ずつのカメラを配布したが、それでも足りない現場もあったという。教師のスキルも必要で、昨年の臨時休業期間に研修した。

 「もし教師が休むことになれば、立ちゆかなくなる」。先の小学校の校長は、児童の学びの保障だけでなく、学校運営上の教師不在のリスクも勘案してオンライン授業を敢行したという。教師宅と教室を結んだケースも実際にある。若年層へのワクチン接種が見通せない中、コロナ禍が収束するまで学校現場の模索が続く。(宮﨑勝)

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