全く異なる物質が結合したり切断されたりして違う物質に変化することを「化学反応」という。水素と酸素が結合してできる水(H2O)もそうだし、炭素と酸素の結合による二酸化炭素(CO2)もそう。このレベルまでなら理解できたが、原子記号が増えて組み合わせが複雑になると、もうお手上げだった◆化学反応という「組み合わせの妙」に魅せられ、挑戦を続けた化学者の根岸英一さんは液晶テレビや医薬品などに使われる有機化合物を効率的に生み出す方法を開発し、2010年にノーベル化学賞を受賞した◆受賞の際、「50年来の夢がかなった」と語っていたその根岸さんが、85歳で亡くなった。一つのことを50年続ければ結果が出るという意味でもあるだろう。思いつきやひらめきは大切だが、形にするのは難しい◆根岸さんはノーベル賞受賞後、「人工光合成」の研究を続けていたと聞く。地球温暖化の要因の一つであるCO2を原料に有用な化合物を作り出す構想だった。厄介者にされがちなCO2も、化学反応によって生まれ変わる。あと数十年あれば形になり、「脱炭素社会」の切り札になっていたのではないだろうか◆人と人の出会いもいい意味で化学反応を起こす。偉大な化学者の死を悼みながら、根岸さんの思いに化学反応を起こした誰かが研究を受け継いでいることを願う。(義)

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