今後1年の活動方針を決める全国知事会議が新型コロナウイルス感染症の流行のため2年連続オンライン方式で開かれた。「新型コロナ感染抑制に向けた行動宣言」「ポストコロナに向けた日本再生宣言」などがまとめられたように、コロナ対策が議論の柱となった。

 会議では多くの知事が、10月から11月にかけ必要な国民のワクチン接種を全て終えるとの菅義偉首相の目標に対し意見を述べている。いつどの種類のワクチンが自治体に供給されるのか早急にスケジュールを示すべきだと強く求めた。

 さらに千人以上の大企業などから始める職場接種には、地方の中小企業が置き去りにされるとの批判もあった。迅速な接種には、自治体が発送する接種券の有無をどうするかも含めて、地元に接種体制を任せる柔軟な対応が必要ではないか。

 第5波の可能性、特に感染力が強いデルタ株(インドで確認された変異株の一つ)流行への懸念も強く示された。国の検査体制の充実を求める声が出たのも当然と言える。

 知事らもワクチンがコロナとの闘い方を大きく変える「ゲームチェンジャー」と認識する。だが、国からのワクチン供給の見通しが立ちにくく、都道府県や市区町村は、態勢づくりに苦労してきた。菅氏が4月に高齢者の接種を「7月末をめどに終了」と表明してからは、達成するよう国から強い圧力を受けている。

 国と地方の関係は対等ではなく、昔の上意下達に戻った雰囲気である。

 会議では「まん延防止等重点措置」の適用を知事が要請して政府が決定するまで時間がかかり過ぎるとして、手続きの簡素化を求める意見もあった。緊急事態宣言の対策では、自治体が選べるよう求める声もあった。感染の状況を分かっている自治体が、自ら対策を組み立てられるよう自由度を上げるべきである。

 病床の逼迫(ひっぱく)に備えて、都道府県境を越え広域搬送する仕組みをつくるべきだとの提案もあった。これらの実現に関係法の改正が必要であれば、今国会を延長してでも国は迅速に対応してほしい。

 本来なら昨年のうちにコロナ対策や迅速な接種の在り方を広く議論し、必要な態勢を整えておくべきだった。それを政府は怠った。対策に国の戦略性が乏しいのもそのためだ。感染症と最前線で向き合う医療関係者や自治体が、つけを払わされていると指摘できる。

 コロナ禍は、給付金の支給やワクチン接種での「行政のデジタル化の遅れ」を浮き彫りにし、地域経済を支える飲食や観光、交通などの事業者に大きく影響した。

 今後の地方活性化の方向性として知事会は、デジタル化を進めるとともに、第5世代(5G)移動通信システムに対応する通信網を基礎的なインフラとして全国普及させるよう提言した。オンラインでの診療や遠隔手術も可能となり都市との医療格差も縮小する。リモートワークの普及にもつながると期待したい。

 2050年に脱炭素社会を実現するには、再生可能エネルギーの普及が不可欠である。土地や風、バイオマスなどが多い地方には有利だ。知事会が提案する「新次元の分散型国土」を創出するチャンスである。国の地方創生策に手詰まり感があるだけに、コロナ後の国土の在り方、地方重視の国土政策を地方から打ち出すべきである。(共同通信・諏訪雄三)

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