労働施策総合推進法の改正により、職場での「パワーハラスメント(パワハラ)」対策が企業に義務付けられてから、今月で1年が経過した。現在は大企業が対象だが、来年4月からは中小企業にも広がる。職場ではパワハラに限らず、セクシュアルハラスメント(セクハラ)やモラルハラスメント(モラハラ)などさまざまなハラスメントが発生する恐れがある。個人の性格や対人関係の問題で済まされがちだが、加害者に自覚がないまま相手を傷つけてしまう「無意識のハラスメント」が問題視されている。コロナ禍で業績が厳しくなった企業も多いと思われ、上司から部下への言動が知らず知らずのうちに厳しくなっていないか。「パワハラ防止」施行1年を機にもう一度、職場の状況を点検したい。

 ハラスメントの定義は難しいが、単純にいえば、いじめや嫌がらせ。改正法によって定められたパワハラの定義を見ると、「優越的な関係を背景とした言動であり、業務上必要かつ相当な範囲を超えたもので労働者の就業環境が害されるもの」とされる。つまり、職責上必要な指示や注意を超え、部下を不快にさせたり傷つけたりする上司の言動といえる。

 佐賀労働局によると、県内では2019年度、職場のハラスメントに関する相談のうち、「いじめ・嫌がらせ」に関するものが前年度比3・9%増の583件に上り、過去最多となった。これだけ増えていると、特定の個人に限った問題では済まされない気がする。なぜハラスメントが発生するのか、組織の在り方、職場の風土に問題はないだろうかと、自省・自戒したい。

 企業の使命・責任の一つに「企業の存続」がある。収益確保の必要性、重要性は分かるものの、業績重視、目標達成に向けた管理主義が行き過ぎて、労働者を競争主義に駆り立てていないだろうか。

 業績がいい時は職場のムードもよく、パワハラは少ないだろう。しかし、コロナ禍のような苦境では職場の雰囲気が悪くなり、パワハラも起きやすいとみられる。

 あまり意識しないままに、長時間労働や「サービス残業」を強いていないか。「業績が悪いから頑張るのが当然」と、過剰なノルマを与えていないだろうか。各職場で点検したい。

 長時間労働で体がくたくたになった上に、「やるのが当たり前」「なぜできない」といった言葉を受けると、傷つき、立ち直れなくなってしまう。2015年に大手広告代理店で起きた新入社員の過労死自殺も、「頑張って当然」「ノルマ達成は当たり前」という企業風土に一因があったとされる。暴言や暴行は当然アウトだが、加害者にパワハラの認識がなく、部下を傷つけることもあってはならない。

 対策に即効薬はないだろう。ハラスメント相談窓口の設置に加え、研修の充実が必要だ。何か問題が起きた時、個人の問題にせず、職場全体で話し合うといった取り組みも再発防止につながる。ハラスメントは突き詰めていくと「人権」問題といえ、息の長い取り組みが必要になるだろう。いずれにしても、従業員は、それぞれの家庭から預かった大切な存在。苦境にある時ほど互いを思いやる気持ちを大切にしたい。(中島義彦)

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