ロボットリハビリ「HAL」の反復練習によって「麻痺側で片足立ちする」感覚をつかむことができた=佐賀市の佐賀大医学部附属病院

 脳出血による後遺症で左半身麻痺(まひ)となった「私」は2016年1月から、佐賀市の佐賀大学医学部附属病院でロボットリハビリの「HAL(ハル)」を始めた。開始から2カ月ほどたった頃と思う。私はいつものようにウオーキングマシンの上を歩きながら、左足にぐっと体重が乗るのを感じた。忘れかけていた「大地を踏みしめる」感触だった。「この感触を大事にしたい」と思った。

 リハビリがうまく進まなかった時、その原因をよく考え、時々、歩くことを「科学」していた。健常な時は思いもしないが、歩くって難しい。

 うまく歩けない大きな理由は触感がないからだと思う。今も、麻痺側の手と足を触られてもどの部分を触られているか分からない。片麻痺で歩く状態を分かりやすくいうと、正座して足がしびれた状態でスケート靴を履き、片足に重りをつけて氷上を歩くようなものだと思う。片方の足を踏み出すためには、軸足となるもう片方の足の踏ん張りが大切だが、触感がないため体重を乗せきれない。だから、体重が左足に乗り切らないまま右足を出してしまう。極論すれば、麻痺側の左足で片足立ちできれば問題ないのだが、なかなか難しい。今も、「運動神経は決して悪い方ではなかったのに、なぜこんな簡単なことができなくなったのだろう」と思うことばかりだ。

 ロボットリハビリ「HAL」では、ウオーキングマシンに手すりがあり、バランスを崩しても安全ベルトが助けてくれるため、転倒の不安がない。そのため歩く動作に集中できた。私が「大地を踏みしめる感触」と思ったのは、「麻痺側の左足で片足立ち」できている感覚だったのだと思う。もちろん、数メートルでも歩けたらうれしい。しかし、社会復帰するには長時間、できるだけ長い距離を歩けた方がよい。そのためには健常な右足にあまり負荷をかけないよう、正しい姿勢の歩き方を身につける必要があった。

 半身麻痺になると、無意識にできていたことができなくなる。脳卒中患者のリハビリは無意識にできていた動作を意識してやり、再び無意識にできるよう体にしみこませるものだと思う。私はロボットリハビリの反復練習によって、少しずつ左足で立つ感覚を取り戻せたのだと思う。この頃、リハビリの開始前に毎回測っていた10メートル歩行のタイムがぐんぐん伸び、10メートルを20秒で歩けるようになった。ロボットリハビリを始める前の40秒に比べると2倍速。手応えが日に日に増した。(佐賀新聞社・論説委員)

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