アスリートたちが、性的な意図をうかがわせる競技会場での盗撮やインターネット上の画像拡散に悩まされる被害が相次いでいる。胸を大写しにされるなど女子選手が狙われやすく、画像を売買するサイトもある。被害は競技会の大小にかかわらず、トップ選手から中高生まで幅広い年代に及んでおり、多くの団体が対応に追われている。

 東京五輪・パラリンピック組織委員会は、会場で性的ハラスメント目的の疑いがある写真などの撮影を禁止することを決めた。また日本陸上競技連盟は、今月下旬に大阪市で開催予定の日本選手権で不審な撮影行為を見掛けた人から通報を受けるホットラインを設置する方針を打ち出した。

 日本オリンピック委員会(JOC)など7団体も盗撮などを「卑劣な行為」と非難する声明を発表、警察と連携して対策を取る。とはいえ、スカート内の盗撮と異なり、ユニホームの上から胸や下半身ばかり撮るのを罰する法律はなく、都道府県ごとに迷惑防止条例で対処するしかない。法整備が課題になっているものの、時間がかかる。

 スマートフォンや会員制交流サイト(SNS)の普及で被害は拡大しやすくなっている。選手が安心して競技や練習に集中できるよう、各団体や競技会の主催者が被害事例や対応例の情報共有を進め、いかに対策の実効性を確保するか、一層知恵を絞る必要がある。

 この問題は昨年夏、陸上の女子選手が日本陸連に相談して表面化。今年に入り、陸連が関連52団体にアンケートしたところ、回答した37団体のうち20団体が直近3年間に盗撮などの疑いで警察に通報・相談していた。ゴール地点や表彰式などで被害が多く見られ、表彰式でジャージー着用を指示するなどしている。

 ほかに入場者の同意を得て主催者側が画像を確認できる仕組みをつくったり、撮影禁止エリアを設けたりもしている。5月にはテレビ番組から女子選手の映像を無断で切り取り、「エロハプニング」といった悪意のあるコメントを付けてアダルトサイトに載せたとして著作権法違反容疑で男が逮捕され、罰金刑を受けた。JOCの情報提供が摘発の端緒になった。

 だが五輪・パラ組織委が言う「性的ハラスメント目的」を裏付けるのは容易ではないだろう。

 最高裁は2008年11月、北海道で女性の背後から尻ばかりを10回以上も携帯電話で撮影したとして迷惑防止条例違反に問われた男の上告棄却を決定。理由で「衣服の上からの撮影でも、被害者を羞恥させ、不安を覚えさせる」という条例が禁じる行為と認定した。

 一方で裁判官5人のうち1人は「衣服に覆われた部分ののぞき見とは異なり、画像は一見して卑わいと言えず、無罪」との反対意見を述べた。

 これと似た反論は現場でも予想され、主催者側が胸ばかり何枚も撮る不審な行為を見つけても言い争いになったり、警察が来る前に画像を消去されてしまったりすることも考えられる。全ての競技会に共通する基本的対策や対応マニュアルなどを早急にまとめ、周知徹底する必要があろう。

 選手が名誉毀損(きそん)や侮辱の疑いで告訴することもできるが、警察の事情聴取などで競技に集中できなくなっては元も子もない。選手とよく話し合った上で、最善の対応を探ることが求められる。

(共同通信・堤秀司)

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