新型コロナウイルスワクチンの集団接種に臨んだ高齢者=5月16日、唐津市鎮西町馬渡島の馬渡小中学校

 65歳以上対象の新型コロナウイルスワクチン接種が進む佐賀県内。佐賀新聞社が20市町に実施した接種状況調査では、進ちょく状況が明らかになる一方、地域が抱えるそれぞれの事情に配慮しながら接種を進めていきたいという市町の思いが改めて浮き彫りになった。

 「低い接種率を見て市民に不安が生じないか。市町ごとの接種率が公表されるのが一番怖いと思っている」と話していたのは、高齢者接種を市内40医療機関での個別接種だけで進めている鳥栖市の担当者。当初、集団接種に比べて個別接種は進行が遅いと予想していた。

 ただ、ふたを開けると接種は順調に動いた。6日時点の1回目の接種率は20市町で最も高い59・53%。担当者は「現在の接種率について『予想より良かった、悪かった』とコメントするのも難しい」と率直に語る。

 鳥栖三養基医師会は「接種者の既往歴などを把握しているかかりつけ医で打つのが安全性が高い」と市に助言。4月19日から接種が始まった。当初はワクチンの供給量が少なく、ほとんどの予約者が医療機関からの連絡待ちだったが、5月の連休明けに1万8700回分のワクチンが届き、接種は一気に本格化した。

 予約者が1千件超という内科医院は、平日午後は診療と接種を並行させ、休診だった土曜日午後をワクチン接種専用に充てている。予約者への連絡などで終日、数人が電話に張り付きになるため、残る業務を周囲で分担している。平日は診療と接種の二つの動線ができるため対応すべき仕事が増えるが、人手は増やさず、業務をどうにかやりくりしているという。

 今回の聞き取りで高齢者への1回目の接種率が14・26%だった唐津市。背景には医療体制のひっ迫が起きないように、介護従事者や、七つの離島の島民への接種を優先的に進めている事情がある。1日500~750人規模で接種は現在加速しており、他市町と同様に7月末には高齢者への接種を完了できる見込みだ。

 市は75歳以上への集団接種を6月4日から始め、約60の医療機関での個別接種と並行して進めている。高齢者接種に先駆けて介護従事者への集団接種は5月24日に開始。約2千人の介護従事者に1回目の接種を終えている。重症化しやすい高齢者が過ごす介護施設での感染は、病床数の逼ひっ迫ぱくにもつながる。唐津東松浦医師会ワクチン副担当理事の阿部智介さん(41)は「認知症の人が入所する施設も多く、そこで感染が広がれば医療機関ではさらなる対応に追われる。住民が安心して医療を受ける体制を維持できるよう接種を進めてきた」と説明する。

 医療体制がぜい弱な離島での感染確認と、県からの要請を受けて、島民1104人分の接種も進めている。介護従事者らの接種で高齢者接種にずれ込みが出ないよう、医師会などが接種にあたる人員を確保してきた。市の担当者は「混乱を防ぐため、スケジュールを前倒しせず着実に進めてきた」と話す。(樋渡光憲、横田千晶)

【関連記事】
このエントリーをはてなブックマークに追加