日米欧の先進7カ国(G7)財務相会合は、長年各国が引き下げを競ってきた法人税率について「少なくとも15%」とすることと、巨大IT企業の税逃れを防ぐ「デジタル課税」の導入で合意した。発展途上国を交えた多国間合意という今後のハードルは残るものの、「底辺への競争」に終止符を打ち、税制のゆがみ是正へ乗りだす時だ。

 法人税は新自由主義の影響が強まった1980年代以降、企業誘致を掲げて各国の引き下げ競争が本格化した。

 近年では、米グーグルやアップルなど「GAFA」と呼ばれるグローバルIT企業が巨額利益を上げながら、税制上の不備で十分に課税できない問題と合わせて、経済協力開発機構(OECD)を中心に課税の在り方が議論されてきた。

 ロンドンで開かれたG7財務相会合の共同声明は、法人税の最低税率について「少なくとも15%」と明記。デジタル課税は工場などの拠点がなくともサービスの利用者がいれば適切に課税できるとし、「大規模で高利益の多国籍企業」に「10%の利益率を上回る利益のうちの少なくとも20%に対する課税」が可能と具体的に盛り込んだ。

 低税率国の同意を得やすくするため米国が最近、15%以上と低めの最低税率を提案したことで各国が歩み寄れたと言える。合意を重視したG7の協調姿勢を歓迎したい。

 デジタル課税も米国案が土台となっており、巨大IT企業など世界の100社程度が対象になる見通しである。

 これまで国際的な法人税改革の議論が進まなかったのは、米国が消極的だったからだ。

 トランプ前政権は景気を重視して大規模な法人税減税を実施。デジタル課税は「米国企業を狙い撃ちにしている」として、強く批判していた。

 その姿勢を大きく転換したのがバイデン政権だ。4月には巨額インフラ投資の財源確保を主目的に法人税率の引き上げを表明。合わせて、グローバル企業が低税率国に利益を移して課税を逃れるのを防ぐため、海外収益への最低税率を上げる方針を打ち出した。

 G7合意は米国の態度変更が好影響した格好であり、バイデン政権の成果として評価できよう。

 米国の姿勢転換の一方で、各国が企業課税の強化で足並みをそろえた背景のもう一つは、新型コロナウイルス対策の巨額支出で財政が著しく悪化した点にある。

 この点で英国は先行しており、3月には財源確保のため大企業向けの法人税率を現行の19%から25%へ引き上げると発表済みだ。税率引き上げは約半世紀ぶりという。

 米英に代表される企業課税強化の動きと対照的に、財政改善への議論が振るわないのは日本だ。コロナ対策費のための国債発行で債務残高が1200兆円に達したにもかかわらず、歳出の厳しい見直しや税収確保へ向けた政府と与党の議論は低調なまま。国際的な法人税見直しの追い風を、企業への適正な負担増につなげる契機とすべきだ。

 今回、G7で合意した法人税改革だが、多国間における広範な合意はなお楽観できない。

 OECDの協議には約140カ国・地域が関わっている上、7月に合意を目指す20カ国・地域(G20)の枠組みには、米国や欧州と対立を深める中国やロシアが加わっているためだ。(共同通信・高橋潤)

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