ワクチン接種後、経過観察で待機する高齢者。密を避けるため、色分けした番号カードでエリアを区切った=5月27日、佐賀市大財の佐藤整形外科

 75歳以上を対象にした新型コロナウイルスワクチンの個別接種が佐賀市で始まり、2週間近くが経過した。接種を担う医療機関は大小さまざまで、少ない人数で奮闘しているところも。殺到する予約電話、休日返上のスケジュール組み、高齢者の動線確保…。これまで経験したことのない接種事業への協力を手探りで続けている。

 5月下旬、木曜日の昼下がり。佐賀市大財の佐藤整形外科の待合室では、高齢者10人以上が名前を呼ばれるのを待っていた。ふだん木曜日の午後は休診だが、コロナワクチンの個別接種に充てた。

 「訪れる皆さんの密をどう避けるか。それが一つのポイントになる」と佐藤直人院長(62)。付き添いの家族らには「外で待ってほしい」との張り紙を掲示している。接種予約は30分刻みで12人ずつの枠を設けたが、早めに来院する人が多く、予診票への記入漏れもあり、一時的に列ができた。「来院は時間通りにお願いしますね」との呼び掛けも聞こえた。

 予診票のチェックと接種を終えると、待合室ではなく、リハビリ室に誘導した。アナフィラキシーなどの副反応に備え、数十分の経過観察が必要なためで、ここで接種済みの高齢者が滞留すると予測した。

 看護師の提案で部屋を大きく二つに分け、「赤」と「青」の札を準備した。「赤の方に座って」「青の方に」と案内し、一定の時間経過後、「赤の札を持っている方は帰っていいですよ」と声を掛けた。接種した84歳の女性は「やっぱり、かかりつけの先生が安心」とほっとした様子だった。

 10人ほどのスタッフは“総動員”。本来なら休みの看護師も出勤し、経過観察室で対応に当たった。この日は65歳以上の予約開始日とあって、午前中は予約電話も鳴りっぱなしだった。佐藤院長は「日常を取り戻すため、とにかく協力しようと職員にも呼び掛けているが、動線確保などは現場任せ。長くなれば疲れも出る。いつまで持つか」と不安を漏らす。

 高齢者接種後に控える一般市民への接種を見据え、「市は現場が抱える予約の負担を軽減する方策を」と訴える。

 佐賀市内で個別接種に協力しているのは126医療機関(4日現在)。7月末までの高齢者接種完了という政府からの要請を受け、個別接種スタート直前に市が集団接種会場を拡大し、早期接種の呼び掛けを行うなど、ワクチン接種の態勢は変化し続けている。複数の関係者は「予約とキャンセル処理を同時並行で進める手間が生じている。キャンセル忘れで廃棄の不安もつきまとう」と、医療機関にのしかかる負担を懸念する。(川﨑久美子)

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