児童相談所による児童虐待の相談対応件数が毎年増加し、佐賀県内でも昨年、「虐待の疑いがある」として警察が児童相談所へ通告した子どもは過去最多の659人となった。現在、通告は警察からが半数を占めるが、日常的に子どもと接する学校は虐待を発見しやすく、早期発見・通告の役割が期待される。文部科学省は「虐待対応の手引き」を定めており、学校現場はその内容を把握した上で、最善の対応につなげてほしい。

 2019年度の児童虐待の相談対応件数は19万3千件で、調査開始から29年連続で過去最多を更新した。相談経路は警察からが49・8%で、近隣知人13・0%、家族親戚8・2%に続き、学校が7・2%(約1万4千件)を占める。

 19年1月、千葉県野田市で当時小学4年生の栗原心愛(みあ)さんが虐待死した事件では、本人が学校アンケートで虐待被害を打ち明けたにもかかわらず、学校や関係機関がその後の対応を誤った。事件を受けて文科省は昨年6月、虐待対応の手引きを示した。

 手引きは、虐待の疑いがある子がいた場合、通告を学校の「義務」としている。虐待の疑いを判断するチェックシートを設けているほか、子ども自身が「家に帰りたくない」と訴えた際も通告を促している。学校に早期発見・通告を求める一方で、虐待の確証は求めておらず、虐待の有無は専門機関が確認し、通告が誤りであっても学校は責任を問われない。

 通告すれば、保護者とのトラブルが懸念されるが「保護者との関係性よりも子どもの安全を第一」に考えた行動を促している。通告の根拠や通告者を教えろという保護者の要求や威圧には管理職を交えて学校ぐるみで、または関係機関ぐるみで対応に当たる。

 ただ、実際の学校現場は、手引きを当てはめれば済むほど容易ではない。ある説明会で、現場の教員は「食事を食べさせてもらっていないと疑うケースは多々ある。全て通告すべきだろうか」と判断基準の難しさについて問題提起し、「教員が明らかに異常事態と感じても、親も子もそれが当たり前と思っている場合、対応を進めていけるのか」という疑問も出された。

 また、「虐待を受けている子は自分の身を守るため、信用できない大人には絶対に口を開かない」とも聞いた。「学校は信用できる。相談できる」という信頼関係を築いておくことが重要になる。通告すべき程度や判断基準は、事例を基に試行錯誤を重ねていくしかないだろう。ただ、こうした課題があるにせよ、「家に帰りたくない」と子どもが保護を求めてきた場合、無理に帰宅させず、必要とあれば、すぐに対応ができるだけの事前準備は各学校でできていないといけない。

 新型コロナウイルスの影響で、仕事が減った親がストレスで暴力を振るい、虐待リスクのある家庭が感染防止を盾に訪問を拒むケースが県内でも報告されている。コロナ禍は児童虐待を悪化させる恐れがあり、注意が必要だ。虐待は、子どもの体や心に傷を負わせて将来に重大な影響を与え、命さえ奪う。虐待が決して許されないことを個々人が認識した上で、学校現場は子どもが保護を求めてきた際、彼らを守る対応が即座にできる準備があるか、チェックを怠らないでほしい。(樋渡光憲)

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