現在の上皇さまが天皇陛下として即位後に初めて訪れた被災地は、長崎県島原市だった。雲仙・普賢岳の噴火で被害を受けた住民に近づき、膝をついて一人一人に言葉を掛けて見舞われた◆当時は「天皇がなさることではない」と反対の声もあったが、「平成」という新たな時代の姿として定着した。そうした行為の心中は知る由もないが、経験のない火山災害に衝撃を受け、寄り添う気持ちを強く抱かれたのではないだろうか◆雲仙・普賢岳は1990年11月、198年ぶりに噴火した。翌91年5月には土石流が発生し、溶岩ドームが出現した。警戒が続く中、6月3日午後4時すぎに大規模の火砕流が起こり、43人が犠牲になった。きょうで30年。佐賀県からは有明海の向かい側、すぐ近くで起きた惨事を思い起こしている◆当時は火砕流という言葉さえ、あまり聞かなかった。どんな噴火現象なのか、その怖さについても認識は低かった。警戒の甘さがあったのは否めないが、後になって責めても仕方なく、教訓としなければならない◆平成の時代は災害が相次ぎ、天皇・皇后両陛下の被災地訪問も続いた。自然の猛威は、備えていても人間の想定を超えていく。経験から学び、防災・減災の意識を高めて対処するしかない。巡ってくる節目の日、慰霊とともに自然の威力を改めて胸に刻む。(知)

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